今日の社説

2019/12/13 00:19

街角の景況感 消費増税の影響は深刻だ

 内閣府が発表した11月の景気ウオッチャー調査で、街角の景況感を示す現状判断指数は39・4と、横ばいを表す50を大きく下回った。消費税が10%に引き上げられた10月は、東日本大震災の影響があった2011年5月の33・5以来、8年5カ月ぶりとなる水準の36・7まで落ち込んでいた。

 11月はV字回復が期待されたが、前月比でわずか2・7ポイントの上昇にとどまった。2~3カ月先の見通しを示す先行き判断指数が10月調査に比べて2ポイント増えているのが救いとはいえ、全体として回復の足取りは極めて鈍く、深刻な状況といわねばならない。

 景気ウオッチャー調査は景気に敏感な職種の約2千人から聞き取りし、結果を集計したものである。全国11の調査地域の一つである北陸の街角の声もさえない。

 「消費税の引上げ直後の前月ほどの前年比マイナスではないが、依然として厳しい状況が続いており、前年割れの見込み」(百貨店)、「まだ消費税の引上げの影響が続いている」(家電量販店)、「この時期はタイヤ交換での入庫が多いが、販売に関しては厳しい状況が続いている」(自動車販売店)、「夜の繁華街はこの時期少しにぎわったが、平日は駄目で全体の売り上げが下がっている」(タクシー運転手)、「外食する機会が増税前よりまだまだ減っている」(一般レストラン)、「高額美術品を購入する客は全くいない」(商店街の代表者)

 政府は消費増税による景気悪化を防ぐため、5%のポイント還元やプレミアム付き商品券の発行、住宅エコポイント制度の復活などさまざまな手を打ったが、それでも増税の悪影響は免れなかった。景気は「気」から、の言葉通り、景気が悪いと感じれば、誰もが出費を切り詰めようとする。

 国内総生産(GDP)の6割近くを占める個人消費が冷え込んだままでは、景気回復の道筋は見えてこない。

 政府は経済の下振れリスク回避などを目的に、事業規模26兆円の経済対策を閣議決定した。消費増税の影響の大きさを見れば、妥当な判断だ。財政出動によるカンフル剤が必要な局面である。

サウジの経済改革 背景に原油市場の変化

 サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの株式上場は、ムハンマド皇太子が主導する経済改革を推進する狙いである。新規上場で得た巨額資金は、脱石油依存・産業多角化というサウジの長年の目標を実現するため、ハイテクや再生可能エネルギーなどの分野に投資されるとみられるが、ムハンマド皇太子が経済の構造改革に力を入れる背景には、原油市場におけるサウジの影響力低下がある。

 世界の原油生産量は、新型原油シェールオイルを増産する米国が昨年、サウジ、ロシアを抜いて首位に立ち、今年9月には70年ぶりに原油・石油製品の純輸出国に戻った。米国の台頭に対応して、サウジとロシアが生産調整で連携を強めるという変化も見られる。

 日本にとって、最大の原油輸入元であるサウジの安定は重要であり、経済の構造改革に協力すると同時に、中東情勢の変化に一段と目を凝らす必要がある。

 サウジを中心とした石油輸出国機構(OPEC)と、ロシアなど非加盟国の連合体「OPECプラス」は今月、原油の協調減産を強化することで合意した。米中貿易摩擦による世界経済の減速などで原油需要の伸び悩みが見込まれるため、供給量を減らして原油価格を下支えする狙いである。

 原油の生産調整でサウジとロシアの思惑に違いはあるが、今回のOPECプラスの会合は、両国の連携を鮮明にした。サウジが盟主として君臨してきたOPECの支配力は低下し、非加盟国を加えた新たな枠組みが需給調整機能を担う時代になったことを改めて印象づけたともいえる。

 ロシアのプーチン大統領は10月にサウジを訪れ、サルマン国王やムハンマド皇太子と会談して、経済協力などに関する約20の合意文書に署名した。トランプ米政権が中東への関与に消極的になるのとは逆に、ロシアは積極的に関係強化に動いている。米国とサウジは同盟関係にあるが、ムハンマド皇太子の自由抑圧の政治に批判は強く、米議会がサウジへの武器輸出に待ったをかけるようになっていることにも留意したい。