今日の社説

2018/09/26 00:34

七尾火電の火災 冬に向けてリスクの点検を

 火災が発生した七尾大田火力発電所2号機は復旧に時間がかかる見通しになった。主力の大型発電所で稼働のめどが立たない状態が長引くと、心配になるのは供給力である。北陸電力は当面、予備力があり、電力供給に支障はないとの認識を示した。

 11月には富山新港で液化天然ガス(LNG)1号機が営業運転を始める。それでも、七尾大田2号機の出力には及ばず、志賀原発の長期停止によって負担が増えた火力発電所に頼る構図に変わりはない。楽観できない状況が続くとみなければならないだろう。

 これからは暖房需要が増える。フル稼働する火力発電所にトラブル発生の心配はないのだろうか。災害によって複数の発電所が止まっても、北海道のような大規模停電に陥らないための備えは万全だろうか。冬場に向けて、安定供給を妨げるリスクが潜んでいないかどうかを点検してほしい。

 出火当時、七尾大田火電の2号機では、発電を停止して修理するために出力を下げている途中であった。タービンに詳しい福井大工学部の本田知己准教授によると、タービンの軸と軸受けの間にある油膜が切れて摩擦熱で発火した可能性があるという。

 北電は火が出たタービンの分解作業を進めている。再発を防ぐためには原因をしっかりと把握しなければならない。運転状況や点検、整備に問題はなかったのか、設備の品質は十分であったのか。タービンのメーカーも含めて原因を徹底して究明し、的確な対策を講じる必要がある。

 北電では志賀原発が停止してから火力発電所の稼働率が上がっている。負荷がかかり続けた設備では突然、思わぬ故障に見舞われる可能性が高まっているのではないか。原子力規制委員会の審査が長期化する中で、他の大手電力でも事情は同様だろう。

 電力会社は自由化の競争に耐えるためにコスト削減を急いでいるが、安定供給と安全確保に必要な設備更新や投資を削ると、業績に響く問題が起こらないとも限らない。大規模停電に至れば、社会に大きな損失が出る。自由化を進める政府は、こうした側面を考慮して施策を展開してほしい。

米朝首脳再会談へ 核の申告厳しく迫らねば

 トランプ米大統領が、近いうちに北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と再会談する意向を表明した。暗礁に乗り上げている米朝交渉を再び動かし、北朝鮮から具体的な非核化措置を引き出す会談にしてもらいたい。

 6月の米朝首脳会談で発表された共同声明には、米側が強く求めてきた「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄」の文言が盛り込まれなかった。現在の実務レベルの交渉の行き詰まりは、そうした曖昧な共同宣言で妥協したツケが回ってきた結果とも言える。

 先に行われた金委員長と韓国の文在寅大統領の会談は、非核化の進展よりも南北の実質的な終戦実現に重きが置かれた印象が強い。その流れにトランプ氏が乗り、北朝鮮の非核化意思の確証を十分得られないまま、終戦宣言に応じることがあってはなるまい。

 米側はこれまでの交渉で、北朝鮮の核施設と核兵器の全容をまず申告するよう求めてきた。このことは、非核化に対する北朝鮮の本気度を探る上でも極めて重要である。南北首脳会談で金氏は、東倉里のミサイルエンジン試験場とミサイル発射台の閉鎖のほか、米側の相応の措置を条件に、寧辺の核施設の廃棄を表明した。

 寧辺には、核兵器の原料となるプルトニウム製造に使ってきた実験用黒鉛減速炉や、使用済み核燃料の再処理施設などが集中している。これら国際的に知られた核施設の廃棄に応じ、非核化意思をアピールする狙いであろう。

 しかし、北朝鮮の核施設は一説には100~150カ所あると推定され、寧辺以外にもウラン濃縮施設の存在が確実視されている。核兵器の保管先を含めて所在地は明らかではないが、米側はこれまでの情報活動で相当程度把握しているはずであり、申告内容から北朝鮮の非核化意思が本当かどうか推察できよう。申告される核施設リストは、北朝鮮の真剣度を測るバロメーターとも言える。

 一方、トランプ氏と文氏は、非核化の必要性を北朝鮮に理解させるため、制裁措置の厳格な履行が重要との認識を確認したという。その真剣度も試される。