今日の社説

2019/04/19 01:43

膵臓がん検査キット 早期発見へ実用化に期待

 がんの中でも早期発見が難しいといわれる膵臓(すいぞう)がんの有無を、血液中の遺伝子を調べることで判定する国内初の検査キットが、白山市のベンチャー企業によって開発された。少量の血液検査で短時間に判定可能な手軽さも利点で、早ければ1年後の製品化を見込んでいるという。

 国立がん研究センターの最新の統計によると、日本人が生涯でがんにかかる確率は男性が62%、女性が47%で、男女を問わず2人に1人が罹患する計算となる。新薬の開発など医学の進歩とともに、診断から10年後も生存している割合を示す「10年生存率」は上昇傾向にあるが、膵臓がんは5・4%にとどまり、部位別では最も低くなっている。

 膵臓は体の奥深くにあるため、がんが発生しても画像診断では早期に見つけるのは極めて難しい。黄疸(おうだん)などの症状が現れて膵臓がんと診断された時には既に手術は不可能というケースがほとんどで、家族や知人が膵臓がんと告げられて、なすすべもなく見送った人も多いのではないか。

 白山市の「キュービクス」が開発した新しい検査キットは、金大附属病院など北陸三県の10病院で約200人を対象に実施した試験の結果、「ステージⅠ、Ⅱ」の早期がん患者に対しても約80%の割合で陽性反応を示した。一般的な腫瘍マーカーによる血液検査の約30%に比べて格段に数値が高く、膵臓がんの早期発見に向けて大きな前進と言ってよいだろう。

 膵臓がんは全てのがんの中で最も治療成績が悪いとはいえ、「ステージⅠ」の段階で発見できれば10年生存率は29%に高まるとのデータもある。治療成績を向上させるため早期に見つける検査法の確立が待たれていただけに、新検査キットの開発は患者や医療現場にとって救いとなる。

 新検査キットは「医薬品医療機器総合機構」の審査を経て製造・販売される。将来的に保険が適用されれば、1万円程度で検査を受けられる可能性もあるという。検査キットを普及させるには費用も重要な要素であり、一日も早く実用化され、膵臓がんの早期発見に道を開くことを期待したい。

F35戦闘機墜落 日米の総力挙げ究明を

 航空自衛隊三沢基地の最新鋭ステルス戦闘機F35Aが青森県沖に墜落してから10日が経過した。操縦士と機体の捜索が難航しているのは残念である。日米それぞれの防衛戦略の根幹を揺るがしかねない重大事故であり、日米同盟の総力を挙げて墜落原因を究明してもらいたい。

 事故調査について岩屋毅防衛相が「あくまでもわが国が主体」と強調しているのは当然であるが、供給元の米国の支援、協力が必要なことは言うまでもない。

 F35ステルス戦闘機は米英など9カ国の共同開発機で、米ロッキード・マーチンが製造主体となっている。米軍によると、採用を決めた国は日本を含めて10カ国を超える。防衛省は、老朽化したF4戦闘機の後継機として、米空軍仕様のF35Aを105機、短距離離陸・垂直着陸が可能な海兵隊仕様のF35Bを42機導入する方針である。第一陣として三沢基地に、事故機を含めて13機のF35Aが配備され、ことし3月に飛行隊が新設されたばかりである。

 防衛省によると、事故機を含め三菱重工業小牧南工場(愛知県)で組み立てられた4機と、米国ですべて製造された1機が17年と18年に計7回、飛行中の不具合で緊急着陸する事例があったという。その後、問題点を改善して飛行しており、今回の墜落原因との関係は不明である。

 戦闘機は不具合を修正しながら徐々に精度を高めていくのが通例とされるが、米政府監査院(GAO)の報告書によると、F35には昨年1月時点で966件の技術的問題点が見つかり、量産段階までに解決できない恐れのある問題点は25件に上るという。GAOが指摘したこれらの問題点が事故原因に関係するかどうかの検証は、米側の協力が欠かせない。

 墜落した海域の水深は約1500メートルで、フライトレコーダーなどの回収が困難なことも壁になっている。機体に原因があるのか、操縦ミスかの解明は容易ではない。F35の信頼性に傷がつくことや、機密漏えいを警戒する米政府と日本の防衛当局の信頼関係も、調査で試されることになろう。