今日の社説

2018/12/18 00:50

イカ漁獲量最少 違法操業が増長する危機に

 日本海のイカ漁が今年も深刻な不漁となっている。中型イカ釣り船団が所属する石川県漁協小木支所では漁獲が昨年より3~4割も減る見通しとなった。不漁のため来年1月末までの漁期を残して操業を終えるという。

 漁獲量が2年連続で過去最少を更新する理由は明らかではないが、県漁協小木支所は自然現象の影響ではなく、日本海の好漁場に出てくる外国船が増えたためとみている。確かに日本海では今年も北朝鮮の漁船が大挙して押し寄せ、日本側の排他的経済水域(EEZ)に侵入した。

 北朝鮮船は能登半島沖の大和堆(やまとたい)周辺から北海道沖にまで行動範囲を広げている。安全に操業できなくなった日本の漁業者が資源の減少を心配し、違法操業の横行を憤るのも無理はない。

 海上保安庁と水産庁は懸命に取り締まっているが、北朝鮮船は数が多く、漁業関係者によると、日本側EEZへの侵入を防ぎ切れていないという。今年は木造船だけでなく、より大型の鋼船が目撃されたのも気掛かりである。

 北朝鮮は外貨獲得のためにも漁業を重視しているとみられる。そうであれば、来年も船は減らないだろう。日本海は違法操業が増長する危機にさらされている。今年は韓国の警備船や漁船とのトラブルもあった。政府は安全と権益が脅かされている現状を厳しく認識しなければならない。

 日本海側では、北朝鮮籍とみられる船の漂着や漂流も大きな問題である。今年の漂着数は過去最多の勢いで増え、既に180件に達している。これだけ多いと、昨年、北海道や秋田県で乗組員が人知れず上陸したような事件が北陸でも起こるのではないかと不安になる。密入国を防ぐためにも、日本海での取り締まりを強化する必要性が高まっている。

 政府は今年度第2次補正予算案と来年度当初予算案に水産庁の外国漁船対策費として計300億円余を計上する。装備と人員を拡充して取り締まりの強化を急がなければならない。違法操業に直面する漁業者は「このままでは漁場が乗っ取られる」と訴えている。臨検や拿捕(だほ)を求める切実な声を政府は重く受け止めてほしい。

「妊婦加算」の凍結 抜本的見直しを求めたい

 妊娠した女性が医療機関を受診した際に窓口負担が上乗せされる「妊婦加算」について、根本匠厚生労働相が「いったん凍結する」と表明した。妊婦加算は、今年4月の診療報酬改定で新設されたばかりだが、「妊婦というだけで負担が増えるのはおかしい」などの批判が相次ぎ、自民、公明両党が見直しを求めていた。

 妊婦加算は妊婦健診を除く全ての診療科が対象で、窓口で支払う際、自己負担が3割の妊婦の場合、初診で約230円、再診で約110円が上乗せされる。少額とはいえ、継続的に受診すれば負担は増える。妊娠に伴って産休に入り、収入が減ってしまった人などは不満に思うだろう。

 産婦人科の医師は、妊婦や授乳をしている女性に対し、一般患者に処方する薬をそのまま出すことは少なく、週数や体調に合わせて適切な薬を選び、量を調整する。そのため診療に要する時間は、どうしても長くなりがちだ。

 妊娠中の女性が、産婦人科以外の病院や診療所を外来受診した際にも、医師が胎児や母体に安全な薬や検査方法を念入りに選ぶなど、丁寧な診療を促すという妊婦加算の趣旨は理解できる。

 だが、コンタクトレンズの処方で医療費が上乗せされたり、治療の後で患者が妊婦だったことを知った医師から妊婦加算を請求されたりする例があったという。妊娠と無関係の治療でも負担増になるなら、「妊婦増税だ」などと不満が漏れるのも無理もない。凍結を決めた以上、適用の厳格化程度ではなく、2020年度の診療報酬改定に向けて制度を抜本的に見直すよう求めたい。

 政府はこれまで少子化対策として、出産育児一時金や育児休業給付金、出産手当金、児童手当などの給付金を充実させてきた。自治体も子どもの医療費を助成するなど、子育て支援を強化している。妊婦の医療費負担を増やすのは、こうした流れにも逆行する。

 たとえ妊婦加算相当分を公費で肩代わりしたとしても、10億円程度の予算で済む。妊婦に負担を求めるという発想では、国民の理解は得られないのではないか。