今日の社説

2019/10/18 01:12

台風19号被害 避難の意識と施設点検を

 台風19号が「特定非常災害」に指定されることになった。運転免許証や飲食店営業など生活、業務に必要な行政手続きを特例措置で救済し、地域復興を推進することは重要である。

 速やかな実施が望まれるが、死者が多数に上り、いまだに行方不明者がいることは誠に痛ましい。台風のように災害の発生まで時間的猶予がある場合は、防災対策で人的被害をゼロに近づけることは可能とされながら、現実には犠牲者が絶えないのは残念である。

 国土交通省は、鬼怒川が決壊した2015年の関東・東北豪雨災害を教訓に「水防災意識社会再構築ビジョン」を策定した。従来の施設整備だけでなく、「施設では防ぎきれない大洪水は必ず発生する」という認識の下、水害危険情報の提供やハザードマップの改良など、ソフト対策にも力を入れて人的被害を極力減らす方針を明確にしたのが特徴である。

 減災という考え方に立って、気象庁、自治体も情報提供や避難勧告・指示を早めに出すようになった。台風19号の場合も、その傾向は明確であった。

 住民の防災意識はなお不十分であり、犠牲者が多数になった一因とみられるが、流域住民らの意識改革も着実に進み、早めの避難を心掛ける人も多くなった。それに伴い、東京などでは指定の避難所の収容能力が足りないといった問題も浮き彫りになった。住民の防災意識が高まり、自治体の避難勧告・指示が浸透するほど、既存の避難所で対応が困難になるのは明らかであり、各自治体は避難所の収容能力や立地環境を再点検しなければなるまい。

 緊急対応として、民間事業者が指定管理者として運営する公的な施設を臨時避難所とすることもあり得る。実際、過去にそうした例があり、自治体と民間の指定管理者が災害対応で臨機応変に対応できる態勢を事前に決めておくことが重要であろう。

 国交省のビジョンは、早めの避難が必要な区域を明示するなど、使い勝手のよいハザードマップに改良することも盛り込んでいる。ハザードマップは避難の判断に有効であり、より精度が高く、充実したものにしてほしい。

能登の農家民宿 開業が人を呼ぶ好循環に

 能登の里山里海の恵みを生かして、農家民宿を開業する動きが出てきている。先月には珠洲市内で長野県からの移住者がイタリアン料理を提供する農家民宿をオープンしたように、県外からも能登に熱い視線が注がれている。県では滞在型観光を推進するため、農家民宿の開業を後押ししてきたが、県外からの移住者が、さらに能登に人を呼び込む力になるという好循環を作りたい。

 奥能登の農家民宿は、能登町の「春蘭の里」を中心に、国内外から評判が良く、現在では民宿が奥能登4市町に広がり、年間1万人を超える修学旅行生や外国人観光客を受け入れている。隣県の氷見市でも、古民家再生事業を手掛ける兵庫県の企業と協定を結び、民家を活用した「農泊」観光に乗り出したように、自然環境と古い建造物を磨き発信する取り組みが、にわかに脚光を浴びている。

 石川県では農家民宿をはじめとする滞在型観光「スローツーリズム」を進めるため、昨年夏に「サポートデスク」を開設して、物件探しや資金調達など、農家民宿の開業に関する相談を受けている。開設以降、同デスクを活用して能登一円で農家民宿が相次いで開業し、七尾市では300年以上燃え続ける「火様(ひさま)」の種火を預かる施設として、希少性をアピールしているところもある。

 先に珠洲市で開業した人は、丘陵に囲まれた田畑や能登瓦の家屋が残る風景が気に入り、築約100年の古民家を購入した。珠洲焼や輪島塗の器で創作イタリアン懐石を提供するスタイルで、県内外から予約があるという。こうした地元の特徴や自分たちの得意分野を生かして、独自の魅力付けをする取り組みが目立ち始めた。

 奥能登では人気の「春蘭の里」でも収容力の点から、これまで300人規模の修学旅行などが受け入れられないケースもあり、今年春から奥能登2市2町の農家民宿が連携し大人数の旅行者を分散して受け入れる体制も整った。

 これからも県外から民宿を開く意欲のある人を受け入れて、多彩なスタイルの民宿を増やし、奥能登の民宿の質と量を高めたい。