今日の社説

2019/10/14 01:06

北陸新幹線に浸水 影響長期化の打撃が心配に

 台風19号の猛烈な大雨は関東や東北などに大きな被害を及ぼした。多くの死傷者と行方不明者が出た事態に胸が痛む。関係機関は救助と捜索、復旧に全力を挙げてもらいたい。

 北陸には直接、大きな被害はなかったものの、北陸新幹線に予想外の影響が出た。長野市にある「長野新幹線車両センター」が千曲川の堤防決壊で水没状態となり、車両が水に漬かった。

 北陸に活力をもたらしたスマートな車体が茶色に濁る水に窓の下まで没した姿は衝撃的である。災害時に東海道新幹線の代替機能を発揮しなければならない北陸新幹線が水害で止まるのは痛い。

 JR東日本によると、10編成の120両に浸水したという。北陸新幹線の30編成のうち3分の1が使用不能に陥ったことになる。検査機能を持つ車両基地の設備にも重大な被害が出ているだろう。

 JR東日本は当面、東京と長野の間を折り返し運転すると決めた。金沢-東京間の見通しは出ていないが、JR東日本と西日本は安全を確認した上で、運行の再開を急いでほしい。

 長野の基地にある車両は床下の重要機器が完全に水没した。専門家によると、水に漬かった電気系統の機器は信頼性が落ちるため、交換を余儀なくされる。安全で安定した運行を保つためには抜本的な補修が必要になるだろう。今後は金沢-東京間の運行が再開されても、輸送力が落ちた状態が続くことを想定しなければならない。

 高速で大量輸送が可能な北陸新幹線は北陸に欠かせない存在になった。ダイヤの乱れは日本中に影響が及ぶ。北陸新幹線を運行するJR東、西は連携体制とダイヤを工夫して、浸水被害の長期化による打撃を抑えてほしい。

 長野の新幹線車両センターは水がたまりやすい低地にあるという。今回の堤防決壊は気象庁が特別警報を出すほどの大雨が原因であったとはいえ、氾濫の備えに隙はなかったのだろうか。

 北陸新幹線では白山市の手取川扇状地に「白山総合車両所」がある。JR西は記録的な豪雨でも浸水被害が出ないように、備えが十分かどうかを点検してほしい。

ラグビー日本8強 被災地も力づける快進撃

 台風19号通過直後の傷痕が生々しく残る中、ラグビー日本代表がW杯で史上初のベスト8進出を決めた。台風による広範な被害状況が刻々と明らかになり、試合ができるかどうかも危ぶまれたが、そうした状況下でも、集中力を途切れさせない気迫のプレーでスコットランドを振り切った。代表のスローガン「ONETEAM(ワンチーム)」を体現した選手とファンが一体でつかみ取った8強であり、つらい状況下で復旧を待つ被災者を力づける勝利とも言えるだろう。

 今回、日本代表の31人中、国籍取得や居住などの条件を満たした外国出身選手が15人となったが、出身国はさまざまでも、日本のジャージーで献身的にプレーする姿は国民に感動を与えた。ランク上位の強豪に対しても、ピンポイントのタックルやプレー選択の的確さなど、入念な分析を結果につなげる頭脳的な戦術も光った。

 1年後に迫った東京五輪に向け相手国への敬意をもって観戦する日本の観客のマナーの良さを、世界のスポーツファンに発信できた点でも収穫は大きいだろう。決勝トーナメントという未踏の領域でも、挑戦者として熱い戦いを展開してもらいたい。

 近年、国内の競技人口は漸減傾向が止まらず、日本ラグビー協会の登録チームは、1990年代前半に5千を超えていたものが、近年では3千を下回り、指導者不足もあって、特に中学生を中心に、若年層でラグビーに取り組む人材が落ち込んでいるという。北陸でも、高校ラグビーで全国大会の上位を狙える強豪校がいる一方で、数校合同でチームを作るケースもあって、地域として厚い地盤を築くには至っていない。

 それだけに、今回の快進撃をステップに、ノーサイドの精神でラグビーを楽しむ気風を定着させ、選手層のすそ野を拡大する一歩にしたい。昨年の高校相撲金沢大会では、半世紀ぶりに出場した地元高校のメンバーにラグビー部から助っ人が加わったことが話題になった。格闘技の厚い伝統を持つ北陸から、磨けば光る逸材を発掘する契機にもしたい。