今日の社説

2020/08/05 01:07

創刊127年 「事実を写す使命」まっとう

 北國新聞は、きょう創刊127年を迎えました。明治26年8月5日に誕生して以来、代を継いで支えて頂いた多くの読者に深く感謝申し上げるとともに、心を新たにして、さらなる紙面の充実に心血を注ぐ決意です。

 本来なら今は、待ちに待った「平和の祭典」がにぎやかに開催されていた時期です。県出身の五輪代表選手がメダルに挑む雄々しき姿を、手に汗握り、応援していたはずでした。それが予期せぬ感染症の襲来で1年延期され、来年の開催すら危ぶまれています。

 多くの読者は、えたいの知れぬウイルスの脅威に立ちすくみ、明日の展望が開けぬ心細さを感じていることでしょう。新型コロナウイルスが未知の感染症で、正確な情報が分からないために、フェイクニュース(嘘(うそ)のニュース)まがいの流言が飛び交っていることも、人々の不安に拍車を掛けているように思えます。

 総務省が新型コロナウイルスに関する間違った情報を調べたところ、32・8%の人が「死体を燃やした時に発生する二酸化硫黄(亜硫酸ガス)の濃度が武漢周辺で大量に検出された」というまことしやかな嘘を信じていました。「こまめに水を飲むと新型コロナウイルス予防に効果がある」は28・7%、「日赤病院が『コロナ病床が満床』『現場では医療崩壊のシナリオも想定』といった発表を行った」は19・5%の人が事実と受け取っていました。

 新型コロナに関する情報がかなり蓄積されてきた今では、笑い話のように聞こえるかもしれませんが、ほんの3カ月ほど前には、少なからぬ人がフェイクニュースに踊らされていたのです。

 総務省が例示した17の情報は全てネット上などで流れたものであり、新聞が報じたものは一件もありません。

 新聞10紙が4月に実施した読者アンケートでは、新型コロナウイルスの情報入手に利用するメディアは、新聞が93・8%と最多でした。メディアに対する接触時間を尋ねる質問では、新聞は「かなり増えた」と「やや増えた」の合計が47・5%となり、新型コロナの正確な情報を新聞から得ようとする姿が浮かび上がります。

 また、最も信頼できるメディアを一つだけ聞く設問では、「新聞」と回答した割合が35・3%と最も高く、次いで「NHKテレビ」が34・0%、「テレビ(民放)」が10・5%でした。

 国民が多くの情報をインターネットを含むさまざまなメディアや媒体から得ているなかで、信頼度については新聞が最も高かったのはうれしいことですが、3人に1人という割合は決して高いとはいえません。新聞が以前ほど高い信頼を得られていないのではないか。そんな焦りにも似た思いにかられます。

 「記事が事実を写し、論説が真実を述べる新聞本来の使命をまっとうする」。これは北國新聞を創刊した赤羽萬次郎が発刊の辞で宣言した言葉です。以来、私たちは「ふるさとの森羅万象の案内者」たらんとして、政治、経済、社会の動きにとどまらず、教育、文化、評論など幅広い分野に取材の網を広げ、客観的事実に即した報道に努めてきました。新型コロナウイルスの報道でも、その姿勢をより強く堅持し、信頼される紙面づくりに取り組んでいきたいと念じています。

 フェイスブックやツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の浸透とともに、いつの間にか情報の質が低下し、長い歳月をかけて築いてきた現代社会の基盤が大きく揺らいでいます。

 日本では既存のメディアがフェイクニュースを流すことはありませんが、新聞によっては自社の主張に沿って「角度をつける」報道の広がりが気になります。

 自分たちの主張や考え方を前面に押し出すあまり、事実を軽んじたり、不都合な部分に目をつぶるようなことがあってはなりません。コロナ禍で、ソーシャルディスタンス(社会的距離)やリモート(遠隔)がもてはやされる時代ですが、私たちは、自分たちの目で事象を見極め、対面取材を積み上げていく取材手法を貫き、「事実を写す使命」を全力で果たしていく決意です。