今日の社説

2019/12/06 00:35

ながら運転厳罰化 緩みないか襟正す機会に

 車の運転中にスマートフォンなどを使用する「ながら運転」が1日施行の改正道交法で厳罰化された。メールなどを使っていて交通の危険が生じれば、違反点数は6点で直ちに免許停止になるのに加え、反則金でなく刑事罰の対象となる厳しさである。

 石川県警が今年1~10月末までで、ながら運転を摘発した件数は1万2767件、富山県警は9750件に上り、近年はいずれも増加傾向にある。先月、富山地検が在宅起訴した42歳会社員は、7月にRV車を酒気帯び運転し、横断歩道を渡っていた82歳女性をはねて死亡させた際、携帯電話の画面を見て運転していたという。安全意識の欠如も甚だしいが、酒気帯びは論外としても、携帯画面を見ながらの運転は身の回りでまだ散見される光景ではないだろうか。

 ながら運転禁止は安全走行のための基本である。「少しぐらい」「自分は大丈夫」という安易な過信が事故を誘発する。教習所で学んだ「かもしれない運転」の原点に立ち返り、危険因子を排除し、備えるのはドライバーの義務である。厳罰化を自らの運転に緩みがないか襟を正す機会にしたい。

 今回の改正道交法により、スマホで通話したり画面を注視したりした場合、罰則として新たに「6月以下の懲役」が設けられ、反則金や違反点数は約3倍に引き上げられた。事故は無論、信号無視や一時不停止を含めて交通の危険を生じさせる違反はさらに重くなった。従前通り目や手を動かし「つい」では済まされない。

 気を付けたいのは対象にカーナビゲーションも入っていることだ。ながら運転による昨年の交通事故は2790件で、過去5年で1・4倍に増えた。内容で最も多いのがカーナビの注視で約60%を占める。地図といえど事故につながるような注視は処罰になる。

 わずか1秒でも画面に目を向けている間に危険性が高まることを心得ておこう。警察庁によると、車は1秒間に時速40キロで約11メートル、時速60キロで約17メートル進む。2秒ならその倍になる。運転中に数秒間、画面を見ていると危険行為になるという意識がまだ低い人は根底から改めなければならない。

テロ続くアフガン 和平協議は進展するか

 アフガニスタンで人道支援活動を続けてきた医師の中村哲さんが、卑劣なテロに倒れた。強い怒りと悲嘆を禁じ得ない。在日アフガン大使館が「偉大な友人」と評する中村さんの功績をたたえ、哀悼の意を表したい。

 アフガンのガニ大統領は「残忍な犯行でアフガンの進歩や発展のための活動を阻止することはできない」と強調している。政府の威信をかけて銃撃犯を捕らえるよう求めたい。

 トランプ米大統領は先ごろ、アフガンを初訪問し、反政府武装勢力タリバンとの和平協議を再開する方針を表明した。タリバン側も歓迎の意を示しており、米政権との協議がまとまれば、包括和平に向けた次の段階として、アフガン政府とタリバンの直接交渉の道が開かれることになる。その道のりは険しく、楽観は禁物であるが、当面は米政権とタリバンの和平協議に期待するほかない。

 アフガンの現状は、政府とタリバンが統制地域を二分する形になっている。タリバンは中村さん銃撃を否定する声明を出したが、テロや戦闘はやむことがない。過激派組織「イスラム国」(IS)やアルカイダ系のテロ組織なども活動し、治安の悪化に歯止めがかからない状況が続いている。

 トランプ大統領は、2001年の同時テロ後から続く「アフガン戦争」に終止符を打つことを目指している。現在約1万3千人のアフガン駐留米兵を8600人にまで削減する方針を打ち出す一方、「和平に合意するか完全勝利するまで駐留し続ける」とも強調している。拙速な米軍撤退による「力の空白」で、アフガンが再び「テロの温床」と化す危険性を認識した発言と受け止めたい。

 日本は、2002年と12年の2度にわたってアフガン復興支援の国際会合を東京で開催するなど、先頭に立ってアフガンの自立を後押ししてきた。非政府組織(NGO)の中村さんの支援活動は、日本の国際評価をも高めた。現地の治安は悪く、民間の支援活動を積極的に勧められる状況ではないが、中村さんの尊い遺志が引き継がれることを望みたい。