今日の社説

2020/10/20 00:55

クマ被害が多発 住宅地に呼び寄せぬ対策を

 クマに襲われて重傷を負う人身被害が石川県内で多発している。3日連続で男女8人が襲われ、19日にはJR加賀温泉駅前の大型商業施設にクマが侵入し、臨時休業する騒ぎとなった。

 16日に白山市で4人、17、18日には加賀市で計4人が襲撃を受け、負傷した。金沢、小松、七尾、能美、かほく、津幡、宝達志水などの市町でもクマが目撃されており、目撃情報が400件に達したのは、統計を取り始めた2005年以降、初めてという。

 富山県内でも入善町と舟橋村を除く全市町で出没や痕跡が確認されており、その数は9月末現在で計318件に上る。石川県より被害が少ないのは、偶然とみるべきだろう。

 今年は、クマの主要な餌となるブナが大凶作で、例年以上に餌を求めて、市街地の中心部にまで出没している。クマは本来、臆病な動物とされるが、冬眠前のこの時期は食欲旺盛で、餌を求めて山を下りてくることがあり、特に危険と思わねばならない。目撃情報があったばかりの地域では、自宅周囲をよく観察し、安全確認をしてから外出してほしい。

 自宅周辺に、実が成ったままのカキがあると、クマに狙われやすい。クリやクルミの実もクマの好物である。また、家庭の生ゴミや漬け物樽などが外に置いてあると、臭いにつられて接近してくる恐れがある。

 庭の果実は収穫するか、処分することを考えたい。生ごみや漬け物樽は外に出さないようにし、玄関や納屋の戸、窓を開けておくのも危険だ。

 白山市では畑作業中の男性が襲われた。農作物が実った畑の周辺も危険度が高く、収穫した農作物を周囲に置きっぱなしにしないことも重要である。地域が協力し合って、餌となるものを極力無くし、クマを呼び寄せることのないよう徹底すべきだろう。

 間伐などを目的に山間部に入る人が減り、クマのすみかである奥山と里山の間にあった緩衝地帯が縮小している。そのため、人里近くに定着するクマが増えているという。クマと人間が隣合わせにいる現実を重く受け止め、できる限りの対策を講じたい。

日越首脳会談 対中国で戦略的に連携

 菅義偉首相がベトナムのフック首相と会談し、南シナ海問題などで緊密な連携を確認したほか、防衛装備品・技術移転協定で実質合意に至った。互いに中国をにらみながら経済、安全保障で戦略的に協力していく方針を明確にしたことは意義深い。

 菅首相が初の外遊先にベトナムを選んだのは、同国の新型コロナ感染状況が落ち着き、いち早く人の往来再開へ動き出していることもあろうが、何よりもまず対中外交において戦略を共有できる国であり、インド太平洋構想推進のため、東南アジア諸国を重視する外交戦略をより強くアピールできると考えたからであろう。

 これに対してフック氏は、地域の平和のため「日本と力を合わせて頑張っていきたい」と、共闘の意思を示す言葉で応じた。

 ベトナムは、唯一の合法政党である共産党が統治する社会主義国で、1980年代に市場経済を導入して発展してきた。この点では中国と同じであり、中国がベトナムの最大の貿易相手国となっている。しかし、古くは中国に支配された歴史があり、中越戦争なども経験して、中国の拡張主義への警戒心が強い。中国と領有権を争う南シナ海では今春、ベトナム漁船が中国公船に体当たりされて沈没する「事件」もあった。

 こうしたことから、ベトナムは「協力しながら闘争する」を対中外交の基本としてきた。経済面で友好に努めながらも、南シナ海の領有権など主権と国益のかかる争いでは決して譲歩しないという決意表明である。いわば、つかず離れずの等距離外交がベトナムの対中外交の特徴である。

 日本にとって、政治体制の異なるベトナムは価値観を共有する国とは言い難いが、対中外交や海洋安全保障で戦略的に共闘すべき国と言えよう。

 米中対立と新型コロナ禍で、日系企業など中国進出の外国企業が生産拠点をベトナムに移す動きを強めており、同国の経済的な存在感は増している。今回の日越首脳会談で、サプライチェーン(供給網)の多元化で一致したことも大きな成果である。