北國新聞社より | 北國新聞社

今日の社説

2018/08/17 00:15

高架橋の崩落事故 北陸でも起こりうる「人災」

 イタリアのジェノバで起きた高架橋の崩落事故は、50年以上前に建設された橋の老朽化が原因とみられる。以前から強度不足が指摘され、断続的に補修工事が行われてきたにもかかわらず、崩落を止められなかった。

 現地の報道では、イタリア国内での高架橋崩落事故は5年間で6度目という。緊縮策でインフラ整備予算が大幅に削減されたことが背景にある。

 日本にも大小合わせて約70万の橋があり、トンネルの数は約1万に及ぶ。高度成長期に整備されたものが多く、5年に一度の点検が義務化されているが、腐食などが見つかったとしても補修工事が追い付かない。国や自治体の財政が厳しく、整備費の大幅な増額が難しいためである。インフラの老朽化に起因する事故は、いわば「人災」であり、日米欧の先進国に共通する悩みといってよい。

 石川県や市町などの道路管理者でつくる「石川県道路メンテナンス会議」によると、北陸三県と新潟県内の自治体が管理する道路橋は、今後20年間のうちに全体の7割が築50年以上になるという。

 崩落したジェノバの高架橋と同じ年齢を刻んでいく多くの橋をどうメンテナンスしていくか。国や自治体が縦割りを排し、優先順位をつけながら計画的に補修工事を行っていく必要がある。

 橋であれば、橋の鋼材や橋脚などのコンクリートの劣化状況を詳細に調べ、適切な時期に必要な修理をしていけば、50年過ぎても安全に使用できる。金沢市の犀川大橋は築94年が経過し、現在は補修工事中だが、強度に不安はない。

 その一方で、今年5月には、富山市の富岩運河に架かる下新橋で、コンクリート製の橋脚の一部が崩落しているのが見つかり、橋を管理する市は通行止めにした。この橋も50年以上前に建設された橋で、大型車両が通行した場合、重さに耐えきれず、崩壊する恐れがあるという。

 劣化が著しい施設は優先的に対策を講じなければならない。とりわけ人命に関わる橋やトンネルは緊急の対応を要する箇所がないか、点検作業を強化し、危険性の除去に努めてもらいたい。

白峰で「林泊」推進 豊かな山村文化発信の場

 白山市白峰地域で、地元の活性化に取り組む各種団体が中心となって、林業と滞在型旅行を組み合わせた「林泊(りんぱく)」を推進する新たな組織を設立した。豊かな林産資源を生かした山村文化体験を提案することで、誘客や移住定住の促進につなげたい。

 白峰地域は、昨年、開山1300年を刻んだ白山の膝元であり、自然と共生しながら、「出作り」として知られる焼き畑の伝統農法や独自の民俗芸能、工芸品といった山村の生活文化を育んできた。また中心部の町並みが重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)に選定され、人を呼び込む豊富な素材がある。これらを一体的に発信する舞台として林泊を生かしたい。

 県内では、能登町の農家民宿群「春蘭(しゅんらん)の里」を筆頭に、農山漁村に滞在しながら、農業体験などを通して住民らと交流する「農泊」を推進する地域が広がりをみせている。政府も、過疎を逆手に取って、埋もれた地域資源を持続的なビジネスとして生かす取り組みの支援に力を入れている。

 白峰地域で発足した「白峰林泊推進協議会」は、まちづくり協議会や観光協会、白山市など6団体で構成し、市観光連盟、白山手取川ジオパーク推進協議会などとも連携しながら、農林水産省から農山漁村振興交付金を受けて、事業を進めていくという。

 事業は、まき割りや炭焼き、ナメコ、ワサビなどの栽培、収穫体験をはじめ、特徴的な山村の自然や文化を実感できる内容を想定して企画を練り、来年度からモニターツアーなどをスタートする。

 宿泊は既存の民宿や旅館、ホテルをメインに、重伝建エリアにある空き家も店舗や宿泊施設として活用できないか検討するそうだが、重伝建の一角で宿泊が可能となれば、他の農泊事業にはない魅力付けとなろう。

 四季を通じて、さまざまな立場の人が集い、地域に人の息づかいが満ちあふれる状況を生み出すことは、足腰の強い地域活性化につながる。各地の重伝建の中には、空き家対策に頭を悩ませているところもあるが、白峰の林泊を有効活用のモデルケースにしたい。