今日の社説

2019/08/23 01:08

星稜が準優勝 野球王国北陸へ確かな一歩

 悲願の頂点にあと一歩届かなかった。高校野球の聖地甲子園で、数々の球史に残る戦いを繰り広げてきた星稜が挑んだ「北陸初の夏制覇」の夢は、来年以降に託される。しかし地元で野球に情熱を傾ける若い世代や、才能の発掘育成に力を注ぐ指導者を勇気づける快進撃は、令和の時代に北陸を「野球王国」に押し上げる確かな一歩になろう。優勝候補の重圧の中、最後まで勝ち残った健闘を県民挙げてたたえたい。

 星稜と言えば、甲子園で演じた劇的な戦歴が記憶に残る。1979年夏の箕島戦は、延長で2度突き放すも2度追いつかれ18回サヨナラで敗れた。92年夏の明徳義塾戦で、松井秀喜選手が受けた5連続敬遠は、野球の試合を超えて社会的な話題になった。

 こうした伝説を残した常連校が出場20回目の今大会で、投打とも過去最強と言われる実力を存分に発揮した。エース奥川恭伸投手が豪腕に加え繊細な投球術で相手打線を封じ、切れ目ない強力打線が好機にさく裂した。智弁和歌山戦をタイブレークで乗り切った後の圧巻の戦いから、地元では多くの人が優勝を疑わなかっただろう。

 履正社との決勝は、粘りを見せたものの一発に泣いたが、窮地に陥っても笑顔を絶やさず、対戦相手への敬意を忘れない選手たちの姿勢は、甲子園を埋めたファンにさわやかな印象を残した。

 「雪国」のハンディもあってか北陸のチームは、戦後長らく、甲子園に出場しても初戦敗退、あるいは「初戦突破で大健闘」という時代が続いた。昭和の後期から、早いうちに才能を見いだす地域のサポートや、私学を中心に選手を育成する環境が整い、近年は甲子園で上位に進出したり、中学レベルでも、全国大会を制すチームが相次いでいる。

 大リーグで活躍した松井氏(能美市出身)を筆頭に、角中勝也(ロッテ・七尾市出身)、石川歩(同・魚津市出身)など球界を担う選手が北陸の地で育っていることも、こうしたすそ野の拡大に寄与しているだろう。

 北陸の全国制覇は持ち越されたが、星稜の活躍がこの地で生き生きと野球に取り組む人たちに希望を与えることを願いたい。

宇宙の防衛戦略 顕在化する新たな脅威

 宇宙領域の安全保障を政策の新たな柱とする防衛省は来年度、「宇宙作戦隊」の新設をめざし、予算概算要求に盛り込んだ。宇宙防衛戦略の強化は各国の共通課題であり、米国は29日に「宇宙軍」を発足させ、フランスも9月に「宇宙司令部」を空軍内に創設する予定である。米仏の対応は、宇宙の軍事力拡大に力を入れる中国やロシアを見据えたものである。

 自衛隊に新設される宇宙作戦隊の主要任務は、人工衛星の脅威となるスペースデブリ(宇宙ごみ)や、不審な衛星の動向を監視することであるが、顕在化する宇宙空間の脅威に対応するため、より積極的な防衛策が必要でないか国会で議論してもらいたい。

 現代の軍事、防衛戦略は偵察衛星や弾道ミサイルの発射を感知する早期警戒衛星など、高度な人工衛星システムに支えられている。宇宙の軍事利用は冷戦時代から活発に行われてきた。主導したのは米国であるが、当初は地上の軍事作戦を支援することが主目的で、宇宙空間は「戦争のない聖域」とされてきた。

 しかし、イラク戦争などで衛星通信の電波妨害が行われるようになったほか、中国が2007年にミサイルによる衛星破壊に成功するなど、宇宙空間の軍事的脅威が現実的になってきた。

 防衛省の18年版防衛白書によると、中国とロシアは、標的の衛星をアームで捕獲するなどして機能を奪う衛星攻撃衛星(キラー衛星)や、衛星と地上局の間の通信を妨害する対衛星兵器の開発を進めていると見られる。

 こうしたことから、トランプ政権は昨年公表した国家宇宙戦略で、敵対者が宇宙を戦闘領域に変えたとの認識を示し、宇宙軍の新設に踏み切った。米中ロの動向をにらんで「積極的防衛力」の強化をめざすフランスは、レーザー兵器を備えた軍事衛星を開発する方針も打ち出している。

 防衛省は、人工衛星の電波が妨害されるのを防ぐため、監視装置の開発を検討している。国際的な宇宙軍拡の現実に対応するために必要であろう。