ホッとニュース 【7月7日02時54分更新】

亡き妻と築いた「城下町」 金沢の男性、マッチ棒20万本で

展示された作品に見入る安田さん(右)と荒川館長=金沢市の県銭屋五兵衛記念館
 36年前からマッチ棒を使った工作に取り組む安田幸次さん(84)=金沢市鳴和1丁 目=は6日、同市の県銭屋五兵衛記念館にこれまで制作した「金沢城」「尾山神社」など 作品7点を寄贈した。作品は先月亡くなった妻スミコさん=享年(85)=と共同で制作 してきた。安田さんは夫婦で積み上げた約20万本分の思い出を「妻の協力があったから こそ」と涙ながらに振り返った。

 安田さんは30代のころ、同市玉川町の旧日本専売公社で見たマッチ棒クラフトに魅せ られ、1973(昭和48)年から、スミコさんと不要になったマッチ棒を集めて制作を 始めた。安田さんが設計図を描き、マッチ棒を組み上げる傍らで、スミコさんは材料とな るマッチ棒の先端に付着した硫黄分を取り除くため、手作業で水洗いしてくれたという。

 始めたきっかけは、10代後半のころの左手親指切断の労災事故だった。復員後、繊維 工場に職場復帰したが冷遇され、「悔しくて、見返してやろう」とあえて手先の器用さが 求められるマッチ棒クラフトに挑んだ。そんな夫を、職場結婚した妻は応援した。

 1作品に3〜5年をかけ、2003(平成15)年ごろまでに9作品を仕上げた。3年 前、市内で開催された展覧会で安田さんの作品を目にした同記念館の荒川勝治館長が「記 念館でも展示させてほしい」と依頼していた。

 体調を崩し、1月から入院していたスミコさんは、作品が展示される日を心待ちにして いたが、6月19日に急性肺炎で亡くなった。

 安田さんは6日、「金沢城」「天徳院」「五重塔」「尾山神社」、英国の帆船「カティ ーサーク」、獅子頭、衝立(ついたて)の計7点を寄贈し、荒川館長から感謝状を受け取 った。安田さんは「妻も喜んでいると思う。妻の分も長生きするため、創作を続けたい」 と話した。60年添い遂げた夫婦の力作は常設展示される。


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