西田哲学「善の研究」発展の軌跡記す 哲学館、京大、金大が自筆ノート調査

2018/05/28 01:55

 かほく市出身の世界的な哲学者、西田幾多郎の孫の自宅で2015年に発見されたノート50冊の中に、西田が日本最初の哲学書「善の研究」を執筆後、思索を発展させた軌跡の分かる記述があることが、石川県西田幾多郎記念哲学館(同市)と京大、金大の調査で分かった。ノートの多くは未公開資料とみられ、修復作業にあたった哲学館関係者は「日本の哲学史に新たな光を与える可能性がある重要な資料」としている。

 

 新資料のノートは、西田の次男外彦さんの長男幾久彦さんが2015年秋、都内の自宅を整理した際に見つけ、哲学館が修復、記述内容を確認した。ノートのほか、考察メモもあり、今回の調査で「西田幾多郎全集」などに収録されていないことが分かった。西田の著作や資料の集大成である全集発刊後に発見された「国内最大の資料群」となる。

 

 自筆の文字を書き起こす「翻刻」作業の結果、ノートは「東大選科生時代」(1891~94年)が10冊で、主に金沢に住み、旧制四高教授などを務めた「金沢時代」(94~1909年)は13冊と推定された。京大助教授や教授に就いた「京大時代」(1910年以降)は9冊とみられ、ほかの18冊は使用時期の確認に至っていない。

 

 「京大時代」のノートでは、1911年に発刊した「善の研究」の中心的なキーワードである「純粋経験」が記されていた。ノートは善の研究の発刊後に記された。同じページで米国の哲学者やドイツの心理学者の思索に関する記述があり、西田がそれまでに示した自らの考えと照らし合わせながら、思索を発展させた形跡がうかがえる。

 

 倫理学や宗教学の講義用のほか、研究、読書用、学生時代の受講記録もあった。館の中嶋優太専門員は「西田哲学の原点を知るとともに、日本の哲学の黎明(れいめい)期を知るための資料と言える」としている。

 

 発見当時、ノート類は傷みが激しく一部ページが固着していた。県内では洋紙のノート類の修復は類例がなく哲学館が国立文化財機構奈良文化財研究所の特例的な協力を得て修復した。

 

 翻刻作業は、哲学館が京大と金大に業務委託して実施した。倫理学の講義ノートなどは、金大大学院人間科学系の森雅秀教授や学生が担当した。「京大時代」のノートは、京大大学院文学研究科の林晋教授や学生らが分担し、哲学館と連携して読み解いた。哲学館などは、さらに研究を進める。

 

 「未公開ノート類」の研究資料化の経緯を報告書にまとめた浅見洋(ひろし)館長は「西田哲学の理解をより豊かにする可能性がある」と語った。