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【6月6日03時31分更新】
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◎モンスター観光客出現 金沢・忍者寺

頭部と胴体が切り離された浄行菩薩=金沢市野町1丁目の妙立寺
頭部と胴体が切り離された浄行菩薩=金沢市野町1丁目の妙立寺
 忍者寺の通称で知られる金沢市野町一丁目の妙立寺は、年間十万人以上が足を運ぶ石川 県内有数の観光名所だ。訪れる人の宗派はもちろん、年齢も国籍も千差万別。これだけ不 特定多数の人がいると、困った観光客も少なくないらしい。「モンスター観光客って言う んかねえ」。住職夫妻の嘆きが聞こえてきた。(荒木雄輔)

 張田珠潮(じゅちょう)住職が、一体の仏像を手にした。浄行(じょうぎょう)菩薩( ぼさつ)といわれるその石像をよく見ると、頭と胴体が切り離されている。約二年前、お 堂で遊んでいた外国人の子供が、倒して壊してしまったそうだ。十歳ぐらいの子供だから 、仕方がないのかもしれない。ただ、へらへらしながら父親が口にした言葉は、「ノープ ロブレム(問題ない)」だった。

 大切な菩薩像を壊しておいて、「問題ない」わけがない。張田住職は「情けないばかり ですわ」と、あきらめ顔である。

 外国人だけではない。今年四月に車でやってきた三十代男性は駐車場の塀を壊し、「験 が悪い」と、本尊に手も合わせず帰って行った。むしろ、罰当たりな気がするが…。

 六十代とみられる女性が「八百円も拝観料を取るのに、食事も飲み物もつかないの?」 と真顔で聞いてきたこともあれば、案内が半分ほど終わった時点で「やっぱり帰るから拝 観料を返して」と言い放った子連れの母親もいたそうだ。聞いているうちに、開いた口が ふさがらなくなってきた。

 昔はこんな珍妙な観光客はいなかったという。張田住職の妻和子さんによると、人が増 え始めたのは、一九八〇(昭和五十五)年にテレビアニメのサザエさんで一家が金沢を訪 れ、カツオが忍者寺を探検してからだという。ただし、子供たちはいたずらをして回って いたが、大人に悩まされることなどなかったそうだ。

 加賀藩が祈願所として建立した忍者寺は外敵の攻撃をかわすため、さまざまな工夫が凝 らされている。幕府の決まり通り、外から見ると二階建てだが、中に入ると階段が二十九 カ所もあり、七層四階建ての構造となっている。しかし、こんなモンスターたちの攻撃が あるとは、加賀藩も思いもよらなかっただろう。

 張田住職が、もう一度、壊れた菩薩像に目をやった。この菩薩像は、さすると自分の病 や傷が癒えると伝えられており、顔を見ると、ほとんどのっぺらぼうになっている。永く あがめられてきた証しである。「もしかしたら、誰かが首がとれそうな大事故を免れたの かもしれんね」。そうでも思わないと救われない。菩薩像からも、嘆きが聞こえた気がし た。

◆妙立寺(忍者寺) 一六四三(寛永二十)年創立。日蓮宗に属し、正久山と号する。開 祖は立像寺初代日樹の弟子一樹院日通。建物は二階建てであるが、一部三、四階になって いるなど、本堂や庫裏(くり)にはさまざまなカラクリが施され、忍者寺として観光名所 となっている。


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