きょうのコラム『時鐘』

2018/06/25 00:34

 もう余震(よしん)の心配(しんぱい)はなさそうだけど、と見(み)舞(ま)いの電話(でんわ)に大阪(おおさか)の知(ち)人(じん)が言葉(ことば)を継(つ)いだ。「あの日(ひ)から娘(むすめ)がヘルメットを離(はな)さない」

無(む)理(り)もあるまい。初(はじ)めて知(し)った震度(しんど)6の衝撃(しょうげき)である。加(くわ)えて、ブロック塀(べい)倒壊(とうかい)で、同(おな)じ4年(ねん)生(せい)が犠牲(ぎせい)になった。「怖(こわ)い」「かわいそう」だけでなく、「何(なん)でこんな目(め)に」、という人(じん)生(せい)の難問(なんもん)にも向(む)き合(あ)わされた

わが身(み)と同じ年(とし)なのに、という思(おも)いは、折(おり)にふれて心(こころ)に浮(う)かぶ。学校(がっこう)の成績(せいせき)に始(はじ)まって、見知(みし)らぬ相(あい)手(て)でも、金(きん)メダリストが誕生(たんじょう)したら「われらが希望(きぼう)の星(ほし)」、ぶざまな振(ふ)る舞(ま)いの人物(じんぶつ)ならば「同世代(どうせだい)の面汚(つらよご)し」。赤(あか)の他人(たにん)と時々(ときどき)つながる不思議(ふしぎ)な糸(いと)である

ヘルメットを離せない児童(じどう)が大勢出(おおぜいで)たかと思うと、胸(むね)が痛(いた)む。が、電話の向こうの親(おや)に、さほど案(あん)じる気配(けはい)はない。熱(ねっ)しやすく、さめやすいという無邪気(むじゃき)な気分屋(きぶんや)に、子(こ)は早晩(そうばん)戻(もど)るはず。そう見抜(みぬ)いている。朝(あさ)を襲(おそ)った大(おお)揺(ゆ)れから1週間(しゅうかん)。そろそろ4年生もヘルメットを手放(てばな)すころだろう

子は忘(わす)れたにしても、大人(おとな)はそうはいかぬ。今度(こんど)こそ、備(そな)えを怠(おこた)るまい、と思う。大人までさめてしまったら、子に笑(わら)われる。