きょうのコラム『時鐘』

2016/07/26 01:38

 1976(昭和51)年7月の田中角栄(たなかかくえい)元首相の逮捕から明日で40年になる。あの日の衝撃は、その2年前にさかのぼってみないと理解できない

昭和49年秋の雑誌報道で「田中金脈」は問題化した。11月に田中首相退陣。翌50年は疑惑(ぎわく)がくすぶり続けたまま過ぎた。あけて51年2月。ロッキード事件発覚。世論が爆発寸前まで熱くなっているその時に「点火」されたのである

当日の本社編集局の空気を覚えている。騒然(そうぜん)となったが「本当か」というより「やっと来たか」の印象だった。次々と陰(かげ)の政界が露見(ろけん)し金権疑惑は膨(ふく)らんだ。元首相の逮捕が「必ず来る」を通り越して「来なければ納得できない」状態に世論はなっていた

検察が世論に引きずられる。これも怖いことだが、日本の司法が超えなければならない壁だったろう。それは、明治以来黙視されてきた大物政治家による蓄財にメスを入れることだった。「元首相逮捕」の本質は、その一点にあっただろう

いま「角栄ブーム」である。大物ぶりを得々と描くが、金で歪(ゆが)んだ政治を忘れたかのような著書に鼻白(はなじろ)む。40年は忘れてしまうほどの昔ではない。