The Hokkoku Shimbun ひと to みらい─石川の未来へつづく、石川の人のこと。

ISSUE#10

加速する人口減少。
私たちに今できることを考えていきます。

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Uターン就農で売上1200万円を実現。

 わが国では近年、農業従事者の高齢化と後継者不足が進み、休耕地、耕作放棄地の増加が里山の荒廃や鳥獣被害を招くなど、さまざまな問題が浮上しています。一方、企業の農業参入や農地の大規模化、集落営農の組織化など農業の退潮を押し止めようとする動きも活発化しており、雇用の受け皿として農業が見直されつつあります。さらに、農業未経験のUJIターン者や定年退職者が新規就農(起農)に挑戦し、地域に活力をもたらしている事例も徐々に増えています。
 能美市内に農園を営む西田栄喜さん(48)は、出身地である同市へ1998年にUターンし、翌年春に新規就農しました。現在は「菜園生活 風来」の屋号で、無農薬野菜の栽培、地域の野菜を使ったキムチ・漬物・菓子づくり、インターネットを通した全国直売を手がけています。
 西田さんの農業経営で特異な点は、小規模なビニールハウス4棟を含め、耕地面積がわずか30㌃しかないところにあります。そこで約50~60種の野菜を育て、年間1200万円の売上を残しています。「栽培(1次産業)、加工(2次産業)、販売(3次産業)を掛け合わせた6次産業化を最初から意識して起農しました。経営が軌道に乗ったのは4年目からですね。無農薬栽培も自分自身が安全安心な野菜を食べたいという思いから始めたのですが、もちろん他との差別化の意味合いもあります」と西田さんは語ります。

 Uターン、小規模でスタートした自身の取り組みが他の就農希望者の参考や励ましになるよう、西田さんは昨年2月に『小さい農業で稼ぐコツ』(農山漁村文化協会)、9月に『農で1200万円!』(ダイヤモンド社)を上梓しました。農業の魅力をより多くの人に伝えることで、新たな就農者が増えることを期待しています。

30㌃の農地で6次産業化に取り組む西田栄喜さん
30㌃の農地で6次産業化に取り組む西田栄喜さん
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Iターン移住から3年後に法人を立ち上げ。

 志賀町で、西田栄喜さん同様に無農薬野菜の栽培と農業の6次産業化に取り組む松村博行さん(41)は茨城県の出身。妻の美香さん(35)の実家のある同町へ2009年にIターン移住しました。一度サラリーマン生活を送るものの、いしかわ農業総合支援機構が運営する「いしかわ耕稼塾」での研修を経て、2012年7月に合同会社「菜友館」を設立しました。美香さんと須藤雅彦さん(36)、慶子さん(46)夫妻が従業員という構成です。
 現在、「菜友館」では栽培野菜を4~5種類に絞りつつ、無添加加工食品の製造・販売に注力し、野菜そのものの販売はしていません。「就農2年目には30種類くらい野菜を作っていたのですが、販売時の価格交渉に限界があり、付加価値をつけられる加工に思い切ってシフトしました」と松村さんは振り返ります。

 無添加加工食品には、自社生産の野菜のほか、無農薬栽培を手がける他の農園や生産者から仕入れた食材を使用。約30品目をネット販売するほか、オーガニック食品を扱うショップに流通させています。「3年目に変化が出て、収益がきちんと出るようになったのは4年目からですね。今後は2㌶の耕地面積を1.5㌶に減らして、加工販売にさらに力を注いでいく計画です」と松村さんは意欲を見せます。

松村博行さん(左から2人目)と妻の美香さん(左端)、須藤雅彦さん(左から3人目)、妻の慶子さん
松村博行さん(左から2人目)と妻の美香さん(左端)、須藤雅彦さん(左から3人目)、妻の慶子さん
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定年後就農ながら、プロの支持を集める農園に。

 農業活性化に定年リタイア後の新規就農者も貢献しています。小松市で「西田農園」を営む西田俊一さん(71)は、63歳まで民間企業に勤める機械系のエンジニアでした。妻の幸恵さん(67)が無農薬栽培の小さな農園を手がけていたことから、農林水産省の有機JAS認定の取得を目指した準備を退職前から進め、認定を受けた2009年に「西田農園」を立ち上げました。
 認定取得後も毎年実施される厳しい検査をクリアしながら、西田さんはハウス6棟を含めた1㌶の農地で、サラダ用を中心とする110~120種の有機野菜を栽培。6次産業化にはあえて取り組まず、生鮮野菜の生産1本に全力投球中です。
 品種の半分は西洋野菜で、売上の7割がイタリア料理、フランス料理のレストラン、ホテルからの引き合いによるものとか。有機JAS認定の差別化が奏功しています。とはいえ、「採算ラインを行ったり来たり」と西田さんは課題を挙げ、「地元の休耕地をさらに借りるなどして農地を3㌶まで増やし、経営の安定化を図っていきたい」と話します。

 独立起業の一つの分野として農業には小さくない可能性があり、成功事例の積み上げは人口減少が加速する地域でのUJIターンの呼び水ともなります。行政も手厚い就農支援策を用意しており、農業への関心の高まりが期待されます。

ニーズに応じ多様な野菜を栽培する西田俊一さん
ニーズに応じ多様な野菜を栽培する西田俊一さん
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