【9月10日05時14分更新】
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◎ガソリン高騰で脚光の中… 街の自転車店消えゆく

晩年、菊治さんが乗るために購入した電動自転車を見つめる繁子さん=金沢市木倉町
晩年、菊治さんが乗るために購入した電動自転車を見つめる繁子さん=金沢市木倉町
 最近はホームセンターなどで低価格の自転車を目にする。ガソリン価格高騰で自転車を 見直す動きもある。一方で「街の自転車屋さん」がめっきり減った気がして調べてみると 、今春、金沢市中心部で一軒の自転車店がひっそり閉店していた。亡くなった店主の遺族 に話を聞くと、職人の誇りを胸に六十年間、住民の「足」を支え続けた店主の物語があっ た。(吉川良治)

 金沢の繁華街の一角・木倉町で約六十年続いた「北自転車店」。店主の北菊治さんが五 月に八十六歳で亡くなり、後継者もいなかった。妻繁子さん(79)が店の歩みを振り返 ってくれた。

 菊治さんは結婚直後の一九四八(昭和二十三)年、大手町に自分の店を開き、三年後に 木倉町へ移った。「仕事を生きがいにした人やった」と繁子さん。年中休まず、朝早くか ら夜遅くまで油まみれになって働いた。自転車が庶民の足の「主役」だった時代、修理の 依頼が重なると、夜中まで工具を操った。夫婦は幼子を背負って働き、三人の娘を育て上 げた。

 昭和の終わりごろからホームセンターなどが低価格自転車の販売を始め、昭和五十年代 には年間百―百五十台ほど売れた北自転車店も販売台数が激減した。県自転車軽自動車事 業協同組合によると、ここ数年の県内の販売台数は年間約六万台。自転車店以外での購入 が約七割に上るという。

 それでも修理に来る客は途絶えなかった。「車輪のスポークを一本まで分解して丁寧に 磨くんですよ」。繁子さんは菊治さんの仕事ぶりをこう語る。「そこまでしてくれなくて も」と客によく感謝されたそうだ。体調を崩した晩年、繁子さんが「もう十分働いたでし ょ。温泉にでも行きましょうよ」と誘っても、菊治さんは「行きたい所があれば行ってく るといい」と答えるのが常だったという。

 現在、同組合加盟の自転車店は百六十店。約五十年前のピーク時は三百五十四店を数え た。金沢市内だけでも以前は百七十店ほどあったが今では約四十店だ。佐藤弘行理事長( 71)は「経営者の高齢化や後継者不足で非常に厳しい」と語る。

 北自転車店には閉店後も近所の人が「直してほしい」と訪ねてくる。「近くに自転車屋 さんがほとんどないから。うちを頼って来てくれるんでしょうね」と繁子さんはしみじみ 話した。店に残る菊治さん愛用のドライバーが寂しそうに見えた。


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