【10月21日02時43分更新】
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◎泉鏡花文学賞に立松和平氏「道元禅師」 難解な世界に小説の味わい

 金沢市制定の第三十五回泉鏡花文学賞の受賞作は二十日、立松和平氏(59)=東京都 渋谷区=の「道元禅師(上・下)」に決まった。選考委員会では「難解な道元禅師の世界 を読者に導く、小説の王道をいく作品」と高く評価された。選考委の協議の結果、三十五 周年記念特別賞を設けることが決まり、大鷹不二雄氏の「鏡花恋唄」が選ばれた。

 授賞式は来月七日、市文化ホールで金沢泉鏡花フェスティバルの一環として行われ、立 松氏には正賞の八稜鏡と副賞百万円が贈られる。式後の文芸フォーラムでは、立松氏が基 調講演する。

 選考委員は五木寛之、泉名月、村田喜代子、村松友視、金井美恵子の五氏。委員会は午 後六時から、東京・赤坂の「浅田」で開かれた。

 選考後に会見した村松氏は、受賞作について「仏法と道元禅師の生涯を伝記的につづる のではなく、語り手としての話者と登場人物である『右門』の二つの視点から道元禅師の 生涯にさまざまな色を加え、作品に小説的な味わいを持たせている」と講評。立松氏が九 年にわたり執筆を続けたことに触れ「けれんみのない追求がなされており、難解な道元禅 師の世界が読者に分かりやすく伝わってくる」と語った。

 山出保市長は「圧倒的なスケールと迫力で読者を引き込んでいく作品であり、この作品 を読んで人の生き方を変えるきっかけになればこれ以上の喜びはない」との談話を発表し た。

 泉鏡花文学賞は金沢出身の文豪・泉鏡花の功績をたたえ、鏡花文学をはぐくんだ金沢の 風土と伝統を広く伝えるため、一九七三(昭和四十八)年に市が制定した。選考対象は昨 年八月から今年七月までに単行本で発刊された文芸作品で、「道元禅師(上・下)」は地 元推薦委員が候補とした七作品を含む五十作品の中から選ばれた。

 特別賞の設定は二十五回記念に続いて二回目となる。特別賞の大鷹氏について村松氏は 「鏡花作品を読み尽くした上での、鏡花の世界への追求ということが読み取れる作品であ る」と評した。鏡花のめいに当たる泉氏が強く推薦したという。

 受賞の知らせに立松氏は「九年がかりで人知れずこつこつと書いてきた。率直にうれし い」と喜びを語った。永平寺をひらいた道元禅師をしのび、「北陸の地での受賞は格別の 思いだ。道元禅師がくれた賞かもしれない」と感慨に浸った。

 執筆に当たって膨大な資料を読み込み、計四回にわたる中国での取材を行った。「一歩 一歩かたくなに閉じられた世界をこじ開けていくような力が必要だった。楽しいというこ とからはほど遠かったが、いまは世界が広がり、人生に深い影響を受けた」と振り返った 。

 この日、飛行機で松山に降り立ち、受賞の知らせを聞いた立松氏。機内で読んでいたの は鏡花の小説「眉(まゆ)かくしの霊」だった。来月七日の金沢での講演に備え、このと ころ鏡花作品を読みふけっているといい、「(鏡花作品には)今の日本文学に失われた豊 かさがある」と魅力を語った。

 立松氏は北國新聞社が発行する季刊「北國文華」で小説「寒紅(かんべに)の色」を連 載している。白山信仰に造けいが深く、今月七日には、白山市内で開かれた「石川県に世 界遺産を」推進会議の「霊峰白山と山麓(ろく)の文化的セミナー」に招かれ、講師を務 めた。四月に開校した金沢市杜の里小の校歌を作詞するなど、県内とのつながりも深い。


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