金大がん研究所と金大ベンチャービジネスラボラトリーの研究チームが、膵(すい)が
んの増殖にかかわる遺伝子を発見し、米医学誌「キャンサーリサーチ」七月号に発表した
。患者の膵がん細胞でこの遺伝子が活性化していることを確認し、細胞実験でこの遺伝子
の働きを止めると、増殖を二分の一に抑制することができた。膵がん治療に向け、この遺
伝子をターゲットにした薬剤や治療法の開発が期待できる。
この研究は、金大ベンチャービジネスラボラトリーの李影奕研究員、金大がん研究所の
藤井千文助手が、向田直史教授(生体防御学)の指導で進めている。
研究チームは二〇〇三(平成十五)年、マウスの肝がん細胞で活性化している遺伝子「
Pim―3」を発見。人の肝がん細胞でも発現していることを確認し、肝臓がん治療に応
用できる可能性があるとして特許を出願した。
しかし、肝がんは既に多くの治療法が確立しているため、治癒率わずか3%という難治
性の膵がんで、遺伝子を標的にした治療の確立を目指すことにした。
研究チームは、患者の協力で膵臓の正常な細胞とがん細胞を比較。がん細胞だけ「Pi
m―3遺伝子」が多く検出されることを明らかにした。膵がん細胞の遺伝子操作でこの遺
伝子の働きを抑えると、がん細胞が自滅していくようになり、増殖速度が落ちることを突
き止めた。
向田教授によると、膵がん細胞が無限に増殖していくのを「Pim―3遺伝子」が助け
ていると考えられ、「Pim―3遺伝子」の発現を抑える膵がん治療が期待できるという
。
研究チームでは既に、この遺伝子が作り出す酵素の構造を解析しており、「この酵素を
阻害する薬剤は、全く新しい仕組みで効く治療薬になる可能性がある。将来的には遺伝子
治療への応用もありうる」(向田教授)としている。