今日の社説

2018/06/25 00:38

祭りの活性化 継承と地域おこしの力に

 少子高齢化や過疎化などで地域の伝統行事の継承が難しくなっている中、石川、富山両県で祭りの活性化を図る新たな取り組みが見られる。珠洲市では7月の市無形民俗文化財「燈籠山(とろやま)祭り」で約20年ぶりに2日続けての「燈籠山」巡行が実現する。富山市では5月の「越中八尾曳山(ひきやま)祭」で約130年ぶりに県有形民俗文化財の曳山の屋根を新調するなどして、祭りを盛り上げた。

 能登のキリコ祭りが文化庁の日本遺産に認定されるなど、地域の祭りは住民の絆を深め、地域振興の資源としても光が当たっている。本格的な夏祭りシーズンに向けて、各地で祭りの活性化へ工夫を重ね、継承と地域おこしにつなげたい。

 珠洲市飯田町の燈籠山祭りは、巨大な山車(やま)「燈籠山」が有名だが、近年は人手不足などで初日だけの巡行となっていた。ことしは客人をもてなす「よばれ」の世話などで巡行に参加できなかった住民にも祭りを存分に楽しんでもらおうと、同町祭礼委員会が婦人会などに声掛けして2日目の巡行を決めた。祭りの継承に欠かせない地元の熱意は、観光客らにも伝わり、能登の魅力も高まるだろう。

 共同通信の2016年の調査では、都道府県が無形民俗文化財に指定した祭りや踊りなどの伝統行事のうち、休廃止されたものが20県で計60件に上った。石川、富山両県は含まれていなかったが、担い手の減少などで継続的な実施の難しさが浮き彫りになった。

 珠洲市では、昨年の奥能登国際芸術祭が地域の祭りを盛り上げるきっかけにもなった。若山町吉ケ池の秋祭りは近年、キリコが1基だけになっていたが、芸術祭出品が縁で学生が助っ人となり、2基のキリコを出すことができた。祭り参加を呼び掛ける地域は増えており、地域の良さを知ってもらう機会にしてほしい。

 富山市の越中八尾曳山祭は、豪華な6基の曳山で名高く、地元は長年にわたり大事に受け継いできた。ここ数年、曳山の屋根や四本柱(しほんばしら)など明治、江戸期以来の新調、修復が相次いでおり、参加する地元の児童らに祭りを守る大切さを伝えてもらいたい。

所有者不明土地 急がれる抜本的な対策

 所有者不明の土地の有効利用を図る特別措置法が成立した。都道府県知事の判断で最長10年間、公園など公益目的の利用を認めるほか、公共事業を行う際の土地収用手続きを簡素化することなどが柱である。

 所有者が分からないまま放置された土地は、災害復旧工事の妨げにもなっており、特措法の制定が待たれていた。が、同法は当面の対症療法といえ、所有者不明土地の増加を防ぐ抜本的な対策を急がなければならない。

 第一に挙げられる課題は、相続登記の促進である。所有者の死亡で土地や家屋を相続した人は、不動産登記簿の名義を書き換えることになっているが、それを行うかどうかは相続人の判断に委ねられている。地価の下落で土地を資産とみる意識も変化するなか、相続登記がなされない土地が全国的に増加している。

 このため政府は、現在任意の相続登記の義務化を検討している。国土保全の観点からも考えられてよい方法であろうが、相続登記が代々なされず、権利関係が複雑な場合などの登記を促進するには、相続人の負担軽減策も併せて検討する必要があろう。

 所有者が分かっている土地でも、事実上放棄された所が少なくない。売りたくても売れず、管理が重荷の土地は、相続放棄や自治体などへの寄付を望むケースも増えるとみられる。こうした土地を引き受ける仕組みを用意できるかどうかも検討課題である。

 市町村は、遅れている地籍調査を促進する義務も負っている。土地の境界や面積を明確にする地籍調査は、境界トラブル防止や公共事業、災害復旧工事の迅速な実施に必要であるが、予算や人員不足で調査の全国進捗率は2016年度末で50%強にとどまる。所有者不明土地問題の対策では、作業の増大が予想される自治体の支援策も考慮しなければなるまい。

 政府は、抜本的な対策に必要な制度改正を20年度までに行う方針という。問題の先送りは状況を悪化させ、解決を困難にするばかりであり、期限を切った政府の真剣な取り組みに期待したい。