今日の社説

2018/04/24 00:32

大和堆警戒前倒し 取り締まり体制の強化早く

 水産庁は今年、能登半島沖の「大和堆(やまとたい)」に漁業取締船を派遣する時期を5月に早める。日本漁船が大和堆でイカ漁を始める前に北朝鮮船が漁場を荒らすのを防ぐためで、大和堆が日本漁船の漁場となる6月を待たずに取り締まりに向かう。

 昨年は小木漁港のイカ釣り船団が大和堆に入った時点で、400隻以上の北朝鮮船が押し寄せていたという。日本の排他的経済水域(EEZ)にある好漁場が占拠されるような状態は看過できない。理不尽な事態を繰り返さないために政府は全力を挙げてほしい。

 問題は対策に実効性が伴うかどうかである。北朝鮮船の乗組員は日本が強硬措置を取らないと高をくくっているのではないか。昨年は水産庁の取締船が北朝鮮籍とみられる船から銃を向けられたこともあった。違法操業を排除するためには、取り締まり体制の強化も早める必要がある。

 第9管区海上保安本部は違法操業対策を9管挙げての重要課題に位置付けているという。海保と水産庁の連携を強めて漁業者の安全を守ってほしい。

 政府は次期海洋基本計画に北朝鮮の脅威を初めて明記する。石川の漁業者が被害を訴えてきた違法操業は、日本の安全と国益を脅かす重大な問題である。今後5年間の海洋政策の指針となる基本計画で、EEZでの違法操業と北朝鮮船の漂流を取り上げるのは当然である。

 計画案では、違法操業や漂流船に対応する要員と装備の充実に取り組む方針が示された。「国民の安全・安心の観点から、重要な課題」と位置付ける以上、予算の重点的な配分が求められる。

 日本海側で安全が脅かされているのは海上だけでない。沿岸には木造船が次々と流れ着き、秋田県や北海道では乗組員が上陸した。

 昨年12月の参院予算委で北朝鮮船の漂着を取り上げた青山繁晴議員は、乗組員が天然痘に感染していた場合を想定する必要性を指摘した。天然痘ウイルスを使う兵器の存在にも注意を促している。

 朝鮮半島情勢は変化しているが、警戒を緩めることはできない。違法操業と漂着の実態を把握し、的確に対応する必要がある。

G7外相会合 対北圧力を続け行動迫る

 先進7カ国(G7)の外相が、北朝鮮の核武装を認めず、全ての大量破壊兵器と弾道ミサイルの完全廃棄を目標に最大限の圧力を維持する方針を確認した。

 G7外相が、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や中長距離弾道ミサイルだけでなく、短・中距離の弾道ミサイル廃棄で一致したことは、とりわけ日本にとって重要である。北朝鮮に対する制裁をまだまだ緩めず、最大圧力で非核化への具体的行動を迫るG7の強い決意を、外相会合の共同声明で明確に示してもらいたい。

 金正恩朝鮮労働党委員長が、北部核実験場の廃棄と、ICBM発射実験の中止を表明したことについて、G7外相は「一歩前進」と評価した。核開発と経済の立て直しを同時に進める「並進路線」の終了を党中央委員会総会で決定したことは、確かに大きな変化に見える。が、非核化の面で「前進」したとは言い難い。

 トランプ米大統領は、金委員長の核実験場廃棄とICBM実験中止表明を「非常によいニュースであり、大きな前進」と歓迎した。核の小型化技術がまだ完成していないとみられる段階での方針転換は、米国を攻撃できる核搭載ICBMの開発断念と解釈することもできるからであろう。

 しかし、「核の兵器化実現」をも強調した金委員長の表明は「核保有国」宣言ともいえる。今後の南北首脳会談、米朝首脳会談を見据え、核保有国の立場から取引をする思惑とみられるが、「核実験の中止は世界的な核軍縮のための重要な過程であり、核実験全面中止のための国際的な努力に合流する」などという物言いは、北朝鮮の非核化を求め、厳しい制裁を科してきた国際社会を愚弄するものと言わなければならない。

 トランプ大統領は、制裁緩和を急いで失敗した歴代政権の取り組みを教訓に、北朝鮮が核施設解体などの行動を取らない限り制裁を緩和しない考えと言われる。北朝鮮への圧力継続は国際社会全体で取り組む必要があり、28日に開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議でも、強い姿勢を示すよう求めたい。