今日の社説

2016/05/26 01:26

サミット開幕 結束強め、牽引役果たそう

 主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)がきょう開幕する。先進7カ国(G7)は、不透明さを増す世界経済の立て直しや国際秩序の安定に向け、どのようなメッセージを発信できるのか。テロ対策や難民問題、中東、北朝鮮情勢など、現下の政治・外交、安全保障に関する課題が山積している。

 中国やロシア、インドなどの新興国経済が減速し、オイルマネーで潤っていた中東諸国も原油安に苦しんでいる。今こそG7の結束を強め、世界経済や安全保障の分野で存在感を示し、牽引(けんいん)役を果たしたい。安倍晋三首相は、自由と民主主義、法の支配といった基本的価値を共有するG7の議長として議論をリードし、世界の平和と繁栄に貢献してほしい。

 経済については、首脳宣言「経済イニシアチブ」で、持続的成長のため金融政策、財政出動、構造改革の三つの政策を各国の事情に配慮して「総動員する」と明記する方向である。英独などは財政出動に消極的とされるが、世界経済の持続的な成長にはG7各国の積極的な取り組みが不可欠だ。アベノミクスと連動する「G7版三本の矢」で、協調を促したい。

 伊勢志摩サミットは、洞爺湖サミット以来8年ぶりにアジアで開催されるサミットであり、中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題や、北朝鮮の核・ミサイル問題に懸念を示す良い機会である。欧州各国は中国と経済的な関係を深めているが、安全保障に関しては、中国に強い姿勢を打ち出す必要がある。北朝鮮の核・ミサイルについては、核不拡散と核軍縮につなげる意義を再確認し、「核なき世界」への思いを共有しておきたい。

 軍事力を背景に、中国やロシアが存在感を高める一方、中東では過激派組織「イスラム国」(IS)が台頭し、世界を揺るがすテロの震源地になっている。来月には英国の欧州連合(EU)脱退の是非を問う国民投票が行われ、米大統領選ではトランプ氏が共和党の指名を確実にするなど、戦後の国際秩序が揺らいでいる。G7各国は戦後秩序の危機を深刻に受け止め、「力による一方的な現状変更」に強く反対してもらいたい。

「角海家」が重要に

 文化審議会は、北前船で栄えた輪島市門前町黒島町にある「旧角海(かどみ)家住宅」を重要文化財に指定するよう、馳浩文部科学相に答申した。角海家住宅は、重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)の黒島地区の核となる北前船主の住宅で、往時の栄華を今に伝えている。

 2007年の能登半島地震で大きな被害を受けた角海家住宅は、復元を成し遂げ、地域の復興のシンボルにもなっている。北陸新幹線開業などで輪島、能登への関心が高まる中、行政と地元が一体となって北前船の遺産の継承と活用に力を入れてもらいたい。

 角海家は江戸期から北前船主として隆盛し、現在の屋敷構えは、1871(明治4)年の大火後に再建されたと伝わる。中庭を囲むように居室を配置する「ミツボガコイ」と呼ばれる間取りなど、黒島地区の典型的な住宅形式の特徴が見られ、良好な状態で保存されていると評価された。

 豪壮な屋敷からは、能登を拠点に日本海に乗り出した先人たちの進取の精神が伝わってくるようである。多くの物資や人を運んで、各地にさまざまな文化を根付かせた北前船のダイナミックな歴史と意義を再認識したい。

 角海家住宅のある黒島地区は、江戸期には天領で、北前船の船主や船員の集落として栄えた。能登半島地震で大きな被害を受けたが、地元が主体的に伝統的な町並みの保存整備に取り組み、09年に重伝建に選定された。角海家住宅は、所有者から住宅などを寄付された市が修復工事を進めて11年に復元を完了した。黒島地区の町並み整備と角海家住宅修復の取り組みは、震災後のまちづくりと文化財保存のモデルケースといえる。ふるさとの宝を守り、伝えようとする地元の熱意が重文指定にもつながったのだろう。

 輪島市では、NHK連続テレビ小説「まれ」の舞台にもなった「大沢・上大沢の間垣集落景観」が昨年、国重要文化的景観(重文景観)に選定されるなど、地域の資源に光が当たっている。北前船文化をはじめ、奥深い能登の魅力をさらに発信してほしい。