今日の社説

2016/09/27 01:43

所信表明演説 求められる実行力と結果

 安倍晋三首相は、参院選勝利を受けた所信表明演説で「未来」という言葉を多用して、国民の負託に応える決意を示した。演説冒頭で4年後の東京オリンピック・パラリンピックの成功と、新たな国づくりのスタートを強調したことは、東京五輪後もにらんだ長期政権の意欲の表れとも受け取れるが、いま何より求められるのは、首相自身が言う通り、経済政策をはじめ安倍政権の各種施策を実行し、「結果」を出すことであると銘記してほしい。

 安倍首相は、雇用の改善と実質賃金増の「経済の好循環」を生みつつあるアベノミクスをさらに加速させることや、1億総活躍社会の実現、財政投融資や新たな交付金制度による地方創生、農業の構造改革などを訴えた。いずれも発表済みで新味に欠けるが、これら政策プランの具体化、あるいは補強に全力を挙げるときであり、新たな政策が見当たらないのは、むしろ当然であろう。

 野党側は、安倍政権の経済政策に批判を強めており、首相は補正予算審議を通し、政策を総動員してアベノミクスを最大限加速させる必要性、妥当性について説得力のある説明が求められる。

 民進党の蓮舫代表は、党の顔として初めて臨む国会であり、対案を提示して国民に存在感をアピールする格好の機会である。経済や社会保障政策だけでなく、外交・安全保障分野でも建設的な議論を期待したい。

 例えば、安倍首相は外交・安保に関する所信表明で、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くす決意をあらためて示したが、沖縄県の反対で工事が中断している米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画は、旧民主党政権が迷走の挙げ句にたどり着いた結論である。蓮舫氏はそうした経緯を踏まえ、外交の基軸がぶれることがあってはならないと、辺野古移設計画を維持する考えを先の民進党代表選で表明している。

 蓮舫氏の正論に対して、代表選を争った前原誠司氏らは見直しを主張し、民進党沖縄県連は反対している。蓮舫氏には、党代表選での自身の発言に責任を持ち、辺野古移設をいかに実現するかという観点からの議論を望みたい。

群馬と共同歴史研究 幅広い交流の礎にしたい

 石川県内の歴史研究者でつくる加能地域史研究会が群馬県の群馬歴史民俗研究会と共同研究に乗り出し、金沢市で初の研究会を開催した。両地域は藩政期から縁が深く、近年は北陸新幹線を介して新たな交流の芽が生まれている。今回の共同研究を通じて両県民が歴史的な結びつきを再認識し、幅広い交流につなげていく礎(いしずえ)にしたい。

 群馬(上州)は加賀藩の参勤交代のルート上に位置し、富岡には前田利家の五男利孝が初代藩主に就いた七日市藩があった。両地域は藩政期から人や物の交流が盛んであり、明治に入っても世界遺産の富岡製糸場をモデルに金沢製糸場がつくられるなど、つながりは深い。

 初の研究会には、両会の研究者ら46人が参加し、「加賀・能登と上州の交流」をテーマに、講演やパネル討論でそれぞれの歴史に理解を深めた。来年3月には群馬県高崎市でも研究会を開く予定という。継続的に研究会を開催するのはもちろん、一部の研究者にとどまらず広く県民が参加できる機会も設けてもらいたい。

 北陸新幹線の金沢開業で、石川と群馬の往来は格段に便利になった。昨年8月に富岡市の中学生が金沢を訪れて伝統工芸を体験し、10月には富岡市で初めて「かなざわ講座」が開催された。ことし10月には富岡高生が修学旅行で金沢を訪れるという。両地域の歴史的つながりに理解を深めていけば、こうした交流はさらに拡大していくだろう。

 加賀藩を介した交流では、金沢市が藩の下屋敷が置かれた東京・板橋区と友好交流都市の協定を結び、旧前田家本邸や前田育徳会がある目黒区とも協定締結を予定している。群馬県では高崎市と交流協定を結んでいるが、今回の共同研究で富岡市などとの協定につながる可能性もある。

 共同研究にあたっては、学術分野だけではなく、地域交流や地域連携の視点が求められる。加賀藩の歴史や北陸新幹線を共有する地域同士が交流し、連携し合うことで互いに活力を吹き込み、地域活性化につなげていきたい。