きょうの社説 2014年4月25日

◎尖閣に安保適用 抑止力強化へ大きな布石
 日米首脳が合意に達した共同文書に、尖閣諸島への日米安全保障条約の適用が明記され ることが決まった。オバマ大統領自身も会見で尖閣が「日米安全保障条約5条の適用範囲にある」と米大統領として初めて明言し、海洋進出を進める中国にくぎを刺した。日米の親密で、強固な同盟関係があらためて国内外に強く印象付けられた意味は大きい。

 米大統領が安保条約5条の適用に言及したのは、中国指導部にとって手痛い一撃になっ ただろう。日本にすれば尖閣防衛の抑止力として、これに勝る布石はない。武装漁民による尖閣上陸など、偶発的な衝突の可能性は当面、遠のいたと見てよいのではないか。

 共同文書への「尖閣」の明記は以前から日本側が強く望んでいたものである。オバマ政 権はこれまで中国への必要以上の刺激を避けるため、大統領が尖閣の防衛義務に直接言及するのを避け、国務長官や国防長官レベルの発言にとどめていた。米国の態度が一変したのは、ウクライナやシリアでの紛争で、世界の警察官としての役割が果たせなくなっている現実を米国自身が思い知らされたことと無縁ではあるまい。

 オバマ政権は世界戦略を見直し、戦力の重心をアジア・太平洋地域に移すリバランス( 再均衡)政策を進めようとしている。安倍晋三首相は、これに呼応するかたちで積極的平和主義を唱え、集団的自衛権の行使容認に向けて動いており、日米双方の呼吸が合ってきたのも功を奏した。リバランス政策は日本が軸となって展開される方向性が鮮明になったといえる。

 首脳会談ではオバマ大統領が集団的自衛権の行使容認についても支持を表明し、一時ぎ くしゃくしたかに見えた日米間の溝を一気に埋めた感がある。中国の軍事圧力に冷静に対処し、緩やかな対中包囲網を敷くことで対抗してきた安倍政権の外交成果だろう。

 もとより、オバマ政権は尖閣諸島という小さな島のために、米中が激突するような事態 は絶対に避けたいと考えている。あくまで対中けん制のためであり、日米ともに軍事衝突を最大限回避していく方向性は変わらない。

◎日米TPP協議 座礁させてはならない
 環太平洋連携協定(TPP)交渉に関する日米協議は、首脳同士の直接会談でも大筋合 意に至らなかった。早期妥結をめざすことでは一致し、日米両首脳の指示で閣僚協議は継続されたが、首脳会談の共同声明は閣僚協議の結果をみて対応するとして、会談後の発表が難航したのは残念である。

 TPPの日米協議は、それぞれの国益と政権の命運がかかっており、互いに譲歩を迫っ ているが、日米協議がまとまらず、TPP交渉が座礁してしまう事態は何としても回避したい。今回の首脳会談が交渉期限になっているわけではないにしても、米議会は11月の中間選挙に向けて政治の季節に入っていくため、協議が長引くほどオバマ大統領は妥協が困難になる。時機を逸することなく、日米それぞれがさらに歩み寄って一致点を見いだしてもらいたい。

 TPPは、アジア太平洋地域の通商ルールづくりを、民主主義や市場経済の価値観を共 にする日米主導で進め、異なる価値観とルールで経済圏の拡大を図る中国をけん制する意義もある。経済だけでなく地域の安全保障にもつながっており、もし日米協議が行き詰まり、TPP交渉が漂流することになれば、中国がめざす経済連携構想が勢いを増し、日米同盟まで揺らぐことになりかねない。

 安倍首相、オバマ大統領とも、譲歩を困難にさせる政治的な国内事情を抱えている。農 産品の重要5項目の関税維持は安倍政権の公約であり、国会決議にもなっている。引き下げに応じても「撤廃」は認められないことは米側も承知しているはずだ。オバマ大統領は中間選挙に向けて経済的成果を挙げる必要に迫られているほか、大統領判断で強力に通商交渉を行う権限(貿易促進権限)をまだ議会から与えられていないため、なおさら安易に妥協できない。

 安倍首相は首脳会談に先立ち、「お互いに柔軟性を発揮し、大局的な見地から判断した い」と述べている。オバマ大統領もそうした認識を持ち、TPPの意義を見失わずに政治決断で折り合いをつける必要がある。