きょうの社説 2014年10月31日

◎金沢の魅力発信拠点 銀座でキラリと輝く存在に
 金沢市が東京の銀座で準備してきた魅力発信拠点が開業した。「ダイニング・ギャラリ ー『銀座の金沢』」と名付けられた拠点は、北陸新幹線の開業に向けて金沢の顔となる役割を担う。強みである工芸と食を生かして金沢ファンを増やす取り組みは待ったなしである。

 銀座には一流と言われる名店が並び、自治体が設けたアンテナショップも多い。その中 でもキラリと輝く存在になるように運営を工夫し、訪れた人に本物が根付く金沢の魅力を印象付けてほしい。

 「銀座の金沢」は大通りに面して新築された商業ビル「キラリトギンザ」の6階にあり 、約290平方メートルの店舗に工芸品を展示販売するギャラリーと地元の食材を使うダイニングが設けられた。

 ギャラリーには著名な作家の作品に加えて、若手の意欲作を展示するコーナーがある。 企画展も開催できるつくりになっており、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が認定したクラフト創造都市にふさわしい見せ方を期待したい。

 ダイニングでは加賀野菜など金沢の食材を使った料理が用意される。茶会や芸妓の踊り 、横笛の演奏といった伝統芸能の披露が加わると、金沢らしいひとときを演出できるだろう。

 建物は開放的なつくりが特徴である。陰影のある金沢の景色とは趣が異なるものの、洗 練された明るさは今の金沢の息吹を伝える効果があるだろう。

 金沢市は銀座に発信拠点を開設するために約2億円をかけた。年間の賃料は約3900 万円になる。運営の委託を受けた一般社団法人の金沢クラフトビジネス創造機構は費用を上回る効果を出してもらいたい。石川県が銀座に設けたアンテナショップとの連携も課題になる。

 銀座は金沢の風格を発信するのにふさわしい街といえるが、ビルの6階に人を呼ぶため には工芸品と食の魅力を高めるのはもちろん、他の施設ができない企画を出し続けて注目を得る必要がある。金沢らしさを求めて足を運ぶ人の期待に応えて感動を与えることができると、金沢の評判は上がるだろう。銀座で一目置かれる店を目指す意気込みを期待したい。

◎拉致再調査で聴取 交渉の主導権どう握るか
 政府代表団を平壌に派遣して行われた日朝協議で、日本側は所期の目的を一応果たした ものの、交渉の前途の厳しさがあらためて示されたといえる。

 政府は今回の協議を、拉致問題の解決が最重要という日本の立場を北朝鮮の調査責任者 に直接伝え、拉致被害者の再調査状況を聴取する場と位置づけていた。協議に特別調査委員会の徐大河委員長が出席したことで目標をクリアした形である。が、拉致再調査を最優先すべきという主張が、そのまま金正恩第1書記に伝えられるかどうかは不透明である。

 2日間にわたる協議でまず留意したいのは、北朝鮮側が日本人の遺骨調査を全面的に実 施したと説明したことである。政府内には、日本人遺骨問題や日本人妻の状況など拉致以外の調査結果を示し、その見返りに制裁緩和などを求めてくるのではないかという見方が根強いが、今回の協議はその可能性をうかがわせる。

 米国は朝鮮戦争時の米兵の遺骨発掘を北朝鮮と共同で行った際、遺骨の数に応じて金銭 を北朝鮮に支払ったといわれる。日本人遺骨問題でも同様の資金提供を求められるとみておかねばなるまい。

 北朝鮮側はこれまで「拉致被害者の安否情報ばかり求める」日本の姿勢を批判してきた 。それは5月の日朝合意に基づくものでもあろう。日本人に関する包括的・全面的調査をうたった合意文書には「調査は一部の調査のみを優先するのではなく、全ての分野について同時並行的に行う」と明記されているからである。

 遺骨問題や残留日本人の処遇問題なども政府が全力を挙げて取り組まなければならない 課題であるが、国家犯罪といえる拉致の問題と人道上の問題を一緒に扱い、同時並行で調査するという日朝合意は、北朝鮮に拉致以外の多様な交渉カードを与え、日本が交渉の主導権を握るのを困難にしている側面がある。拉致再調査カードを最後まで残しておきたいであろう北朝鮮に、「拉致最優先」の要求をのませるのは容易ではないが、粘り強く、したたかな交渉力で困難を乗り越えてほしい。