きょうの社説 2014年10月20日

◎エボラ出血熱対策 北陸でも初動体制に万全を
 西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱が米国やスペインに飛び火し、より広範囲に感 染が拡大する懸念が広がっている。航空路線の発達で世界が確実に狭くなる中で、日本政府も全国の空港や港の検疫所で、水際作戦を強化している。国際便を持つ小松空港や富山空港でも、海外のさまざまな空港を経由して入国するケースもあるだけに、乗客へのチェックの徹底が求められる。

 厚生労働省は、国内で感染者が出た場合、富山市に生産拠点がある富山化学工業(東京 )が開発したインフルエンザ治療薬などの未承認薬の使用を検討するため、専門家会議を設置して手順や枠組を決めるという。

 同薬は既にスペインなど欧州4カ国の患者に投与され治療効果が期待されている。国内 ではインフルエンザ治療用に承認されているが、エボラ熱の早期治療に生かすためにも、新たな使用の指針を早急に定めたい。

 エボラ熱は、感染者が世界で9千人を超え、イタリアで開催されたASEM首脳会議の 議長声明でも「世界の保健衛生と安全保障の深刻な脅威」と警告し、封じ込めへ国際社会の連携を促した。米国では、患者の治療活動に当たった看護師の感染が相次ぎ、接触者への健康監視が厳しくなるなど国民生活の停滞も懸念される。

 万一エボラ熱患者が日本国内で確認された場合、感染症法で受け入れ設備が整った全国 各地の45指定医療機関で患者の治療にあたるが、北陸では各2床の隔離室を持つ富山県立中央病院と福井県立病院が指定されている。富山県立中央病院では、容体や発生場所によって石川県の患者も受け入れるという。

 初期段階での感染封じ込めには県境を越えた協力体制が重要だ。隣県の関係機関が綿密 に連絡を取り合って、患者の迅速な搬送や感染の広がりの防止につながるよう万全を期したい。

 北陸発の新薬の効果に期待が高まる中、地元に住む私たちも遠い世界の出来事ととらえ ず、エボラ熱に関心を持ち、行政には、いざと言う時、できる限り冷静に対応できるように、啓発活動も含めて情報提供してほしい。

◎飼料用米の増産 コスト削減努力をさらに
 農林水産省とJAグループは、家畜の餌として用いる飼料用米の増産に力を入れている 。主食用米の需要減少と生産調整(減反)の廃止で予想される米価下落に対応するもので、全国農業協同組合連合会(JA全農)は、15年産の飼料用米の生産目標を今年産の3倍以上の60万トンに設定している。飼料用米の生産拡大は、耕作地の保全や食料安全保障上の意義も指摘できるが、増産に併せて生産コストを削減する努力が一層求められる。

 飼料用米の生産は近年、赤字を補てんする所得補償制度の実施に伴って拡大している。 多くを輸入に頼っている家畜飼料の国内自給力を高めることは、国際的な穀物市場の価格変動リスクの軽減や食料自給率の向上につながるが、飼料用米を普及させる上での最大の課題は、安価な輸入トウモロコシとの価格競争で、現在の販売価格が1キロ当たり30円前後に抑えられているのは、政府の手厚い財政支援があってこそである。

 政府はコメ政策の転換を図っており、主食用米の減反農家に支給する定額補助金を14 年度から半減する一方、飼料用米への転作補助金の支給方法を変え、現在10アール当たり8万円の補助金を、収穫量の増加に応じて最高10万5千円まで増額することになった。

 農林水産省は、飼料用米の利用可能量(潜在需要)を約450万トンと推計し、生産拡 大をめざしているが、手厚い補助制度に頼るばかりの増産では、国民の納得を得られないのではないか。

 飼料用米の生産に関しては、多収量品種の開発・普及や主食用米とは異なる栽培の工夫 など、生産性を高める取り組みがなされているが、こうしたコストダウンのさらなる努力が必要である。

 需要者である畜産農家の理解を得て協力関係を築くことや、主食用米ときちっと区別し て保管するための施設整備を進める必要もある。また、畜産とコメ作りの盛んな地域は必ずしも一致せず、配合飼料工場はトウモロコシを輸入する関係で太平洋側に偏っている。このため、地域によっては輸送コストの負担も課題となる。