きょうの社説 2014年10月25日

◎北陸の産業観光 ものづくりの基盤が生きる
 北陸の企業に産業観光を受け入れる動きが広がってきた。小松市のコマツ粟津工場は工 場見学会の開催数の上積みを検討する。富山市の五洲薬品は見学しやすいように工場を改装する。ほかにも観光客を受け入れるための投資に踏み切る企業が出ているのは心強い。

 ものづくりの現場は工夫次第で北陸の有望な観光資源になる。修学旅行では格好の見学 先になるだろう。企業にとっても利点はある。企業イメージが向上すると販売促進や人材確保の後押しにつながる。見学で好印象を抱いた学生が就職先に選ぶことも期待できるだろう。北陸新幹線が開業すると、ものづくりの基盤は一段と生きてくるはずである。

 石川県ではコマツ粟津工場が電気使用量を大幅に減らした製造現場の見学や建設機械の 試乗を行って人気を集めている。小松精練は自社で開発した炭素繊維の耐震建材を用いて旧本社棟を改築し、繊維産業の歴史を紹介するコーナーを設けて産業観光に役立てる。

 富山県では五洲薬品が千里工場を改装し、北アルプスの天然水や富山湾の海洋深層水を 使った製品の製造工程を公開して水の魅力を伝える。鋳造メーカーの能作は多数の人を受け入れられるように本社工場を移転、拡大する。YKKや三協立山も積極的に見学を受け入れている。産業観光に力を入れる企業の姿勢を歓迎したい。

 企業が個別に取り組んできた産業観光を体系化する動きも出ている。石川県では県が中 心となって見学を受け入れる企業を紹介する活動を展開した。南加賀地域の県議でつくる加賀観光推進議員連盟は地域の工場を視察し、産業観光の定着を探っている。

 富山県内の8商工会議所は県広域産業観光推進委員会を設け、企業の取り組みを有機的 につなげる活動を進めている。観光の受け入れ候補は100社に上っており、魅力的なコースをつくって情報を発信してほしい。

 産業観光は、ものづくりの企業が集まる南加賀地域や富山県の強みになる可能性がある 。歴史と文化の厚みがある金沢と連携すれば、新幹線開業後の広域観光に奥行きが出てくるだろう。

◎中国4中総会 注視したい「法治」の実態
 中国共産党の重要会議である第18期中央委員会第4回総会(4中総会)で、「全面的 な法治の推進」に関するコミュニケが採択された。法律に基づく統治は当然のことであるが、中国の場合はあくまでも「党の指導」が大前提であり、コミュニケが中国共産党の指導を「法治の最も根本的な保証」と明確に規定していることに留意したい。

 中国ではかねて「法律あって法治なし、憲法あって憲政なし」と言われており、中国国 内の民主派や国際社会から、法治とともに憲政の実現をめざす政治改革の推進が強く求められている。

 しかし、習近平指導部は、中国憲法が規定する人権の保障や民主化要求を力で押さえ込 む動きを強めている。民主・人権活動家の拘束や香港での非民主的選挙制度の押し付け、少数民族抑圧などが象徴的で、政治改革の伴わない法治の推進は、法律を盾にした強権・強圧政治の強化になりかねない危うさがつきまとっている。

 今回の4中総会は、法律に基づく公平な政治システム確立と「反腐敗」の改革姿勢をア ピールすることに大きな狙いがあったといえる。党、政府内の腐敗を徹底的に追及しないと、国民の不満が高まり、共産党の一党支配体制が揺らぎかねない危機感があってのことだろう。法治と反腐敗闘争の推進は、最高指導者の習氏の権力基盤を強固にする側面もある。

 反腐敗闘争では、周永康元党政治局常務委員の摘発が注目されたが、採択されたコミュ ニケは周氏の最終的な処遇について触れなかった。党内には、強硬な反腐敗闘争で締め付けを強めるばかりでは「党が崩壊する」といった懸念も出ており、慎重に処遇を検討してことがうかがえる。

 中国に進出した日系企業などは、法律やルールの適用が党、政府の幹部らの判断次第で 変わるといった事態に悩まされており、法律に基づいて政治、行政、経済が動くことは本来、望ましいことであるが、中国の法治は西側社会と異なって司法の独立もなく、法治の上に「党治」あるという認識を持つ必要があろう。