今日の社説

2015/07/08 01:05

日銀さくらリポート 強まる北陸の人手不足感

 全国各地の景気情勢をまとめた日銀の「地域経済報告(さくらリポート)」で、北陸は近畿とともに、東海の「着実に回復」に次ぐ「回復している」の表記だった。北陸新幹線の開業により、宿泊や飲食、交通、土産物需要が伸び、化学、電子部品・デバイスなどの生産も好調で、雇用・所得環境が着実に改善している。観光客やコンベンション増加に伴う交流人口の増加が北陸の消費者マインドを好転させ、個人消費を押し上げている点も見逃せない。

 日銀金沢支店は個人消費について今後も堅調に推移するとみており、小矢部市のアウトレットモールなど新業態を含む大型小売店の相次ぐ開業によって集客力が増し、北陸全体でみた消費活動はさらに活性化すると判断している。

 ただ、いいことずくめの中で、懸念材料もある。消費の持ち直しや生産増に伴って、人手不足感が一段と強まっていることだ。石川労働局が発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1・48倍で、全国7位の高水準にある。パートやアルバイトの時給も急上昇しており、人手不足が原因の「供給制約」が顕在化するリスクも指摘されている。

 北陸新幹線の開業を機に、首都圏などから北陸への進出を検討する企業があったとしても、人材難が長引けば、二の足を踏むかもしれない。観光客の増加でホテルや温泉旅館の稼働率は大きく改善し、宿泊・飲食サービスの新規求人は前年同期比20・3%増となったが、従業員が確保できないため、十分なサービスが提供できない悩みがある。北陸に足を運んだ観光客やビジネス客にリピーターになってもらうためにも人材不足は頭の痛い問題だ。

 観光客増加の恩恵は、新幹線駅近辺や周辺の観光地、宿泊、飲食、土産物店などに集中していると思われがちだが、レンタカーやバスなどを使った周遊観光が想定以上に活発で、特にNHKの朝の連続テレビ小説「まれ」人気で、能登への観光客が増加している。こうした傾向は石川、富山県内のみならず、福井県嶺北地方や岐阜県飛騨地方へも及んでおり、「新幹線景気」が意外な広がりを見せているのは心強い限りだ。

ギリシャ国民投票 「一つの欧州」の正念場

 ギリシャ国民が欧州連合(EU)の財政緊縮策を拒否したことで、「一つの欧州」をめざす壮大な実験は正念場を迎えている。ユーロ圏首脳会議に先立ち、ドイツのメルケル首相とフランスのオランド大統領は、財政再建の「真剣な提案」をギリシャのチプラス首相に求めたが、ギリシャの離脱でユーロ圏が分裂する事態を回避するには、EU、ギリシャ双方が歩み寄るほかない。

 現在のギリシャはEUなどの支援が継続されなければ、財政、経済は早晩、破綻する。国庫が底を突き、年金支払いなどのために政府借用書の発行を余儀なくされれば、ユーロ圏離脱が現実化する。チプラス氏はEUの要求に抵抗しながら、ユーロ圏離脱は否定している。そうであれば、反緊縮を唱えるだけでは立ち行かないことを認識しなければなるまい。

 一方、EUの盟主で緊縮財政を主導するドイツなどは、ギリシャの緊縮緩和や債務の減免・猶予といった要求は受け入れ難いであろう。が、財政危機の拡大阻止、通貨ユーロの信認維持、さらにはギリシャがEUから離反することによる安全保障上のリスクなどを考えると、ギリシャを切りたくても切れないのではないか。

 ギリシャ危機が表面化した2009年以降の財政緊縮策は、マイナス効果が大きいのも確かで、経済の悪循環で国内総生産(GDP)は縮小し、失業率は高止まりしている。特に若者の失業率は5割に達し、先の見えない不安やナショナリズムがEUへの反発につながっている。疲弊するギリシャの立て直しは、財政緊縮策一本やりでは難しいこともEU側は理解する必要があろう。

 ユーロ圏離脱は、ギリシャにとってもEUにとってもリスクが大きすぎる。ただ、EUの要求を拒絶したギリシャ国民が「新たな民主主義の始まり」と喝采を叫ぶ姿は、欧州統合の困難さを見せつけてもいる。慢性的な財政赤字のギリシャはもともとユーロ導入の資格がなかったとみられている。ユーロ圏に居続けることが本当に合理的かどうかという、より根本的な議論の機会とも思われる。