今日の社説

2015/09/03 01:22

育鵬社の教科書 じっくり読んで評価したい

 石川県内の中学校が来年度から4年間使用する教科書に、初めて育鵬社版が採用された。県内9地区のうち、歴史教科書は金沢市と小松市、加賀市の3地区、公民の教科書は小松市と加賀市で使用され、歴史については中学生の半数以上が育鵬社版で学ぶことになる。

 地方教育行政法は、教科書採択の権限を教育委員会に与えている。ところが、文部科学省が下部機関による絞り込みを禁ずる通知を出しているにもかかわらず、学校教員らが事前に絞り込みを行い、教育委員会がこれを「追認」する事例が散見される。

 育鵬社の教科書に対しては教職員組合などが否定的な見解を示しており、事前の絞り込みで「推薦」されることはまず考えにくい。金沢、小松、加賀市の各教委が育鵬社版を採用したということは、教育委員が職責を果たし、責任を持って選んだ結果だろう。教科書を読みもせずに批判するのではなく、これから4年間、じっくり読み込んで選択が正しかったかどうかを検討し、評価していきたい。

 県外で新たに育鵬社版を採用したのは大阪市、山口県防府市、東京都小笠原村などである。山口県岩国市と愛媛県上島町は育鵬社版を継続採択した。育鵬社版については太平洋戦争をアジア解放の戦争だったと読み取れる部分があるなどと批判する声がある。だが、教科書は厳正に審査され、検定意見に応じて修正が行われている。他社版と比べて大きな違いがあるとは考えにくい。

 例えば竹島と尖閣諸島について育鵬社版は「竹島は(略)日本固有の領土ですが、(略)韓国が領有を主張し、不法占拠しています。これら領土問題のほか、日本固有の領土で、日本が実効支配している沖縄県の尖閣諸島について、中国政府と台湾当局が領有を主張しています」と記している。

 採用数が多い東京書籍版は「竹島も日本固有の領土ですが、韓国が不法に占拠しています。(略)尖閣諸島は、日本が固有の領土として実効的な支配を続けています。中国がその領有権を主張していますが、広く国際社会からも日本の領土として認められています」とあり、大きな違いはない。

中国「抗日」行事 互いに学ぶ「歴史の教訓」

 中国は3日、「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」を記念する軍事パレードを開催する。中国側は「抗日戦争勝利」の記念行事について、「今日の日本と日本国民を標的にするものではない」と釈明しているが、恣意(しい)的ともいえる日中戦争の歴史解釈で共産党政権への求心力を高め、日本への圧力を強める習近平指導部の姿勢に、憂慮の念を抱かざるを得ない。

 中国が建国記念日以外に大規模な軍事パレードを行うのは初めてである。軍事力増強とそれに基づく強引な領有権拡大の意思の発露ともいえ、日本や欧米、インドなど主要国首脳がパレード参観を見送ったのは当然といえる。

 習指導部は、抗日戦争勝利を導いたのは共産党であり、反ファシズム戦争の「戦勝国」として国際秩序づくりを担ってきたという政治宣伝を強めている。「共産党こそが抗日戦争勝利の立役者」と、旧日本軍と戦った国民党を無視するような主張で共産党一党支配の正当化を図る姿は、「歴史を直視すべき」という中国自身の訴えに反するものではないか。

 韓国の朴槿恵大統領は、中国の抗日戦勝利記念行事に対し、「韓国の独立抗争の歴史をたたえる側面もある」として参加したが、中韓両国がともに「抗日戦争」を戦い、勝利したかのような歴史認識も正確ではない。真摯(しんし)に歴史の教訓に学ぶ姿勢は、日中韓それぞれに必要である。

 また、中国が反ファシズム戦争勝利という歴史を誇り、教訓とするなら、自国の民主改革や人権尊重の要求にもっと耳を傾けてしかるべきであろうが、習指導部はむしろ逆方向を強めている。

 この点にも関連して納得しがたいのは、国連の潘基文事務総長が軍事パレードを参観することである。「中立性に問題がある」という日本政府の懸念に対して、潘氏は「国際社会は過去の悲劇から教訓をくみ取り、その上に明るい未来を建設すべき」と述べている。そうであれば、国連代表として、民主主義と人権の尊重という先の大戦の教訓を中国に直接伝える努力をしてもらいたい。