今日の社説

2015/05/24 01:29

手取川の濁水 現地調査で影響見極めを

 手取川で発生した濁水は、近年にない規模で下流域に広がり、漁業、農業への影響が深刻化している。

 上流域で起きた大規模な斜面崩落が原因だが、濁りがいつまで続くのか、見通しが立たないままでは住民の不安は募るばかりである。現地調査で、より詳しい状況を把握するとともに、流域一体で連携し、被害を抑える手立てを考えたい。

 濁りは5月初旬に確認され、手取川から取水する用水を経て、小松市の梯(かけはし)川や金沢市の犀川にまで及んだ。河口、沿岸部でのシロウオ漁や定置網漁が振るわず、流域の水田では土砂が堆積する被害が広がった。

 手取川扇状地は白山から多大な水の恩恵を受ける一方、ひとたび濁水が生じれば、張り巡らされた水路網を通して被害が拡大するリスクが浮き彫りになった。

 国土交通省と県、流域市町が開いた手取川濁水関係連絡会では、崩落現場に至る道路がないため、ヘリコプターによる現地調査を実施することが報告された。発生域の実態を把握しなければ、土砂流出の見通しはつかめない。専門家の知恵を集め、応急措置を含めた検討を急ぐ必要がある。

 国交省の調査では、手取川の濁度は一時期より低下している。こうした状況の変化を示す情報は、積極的に発信してほしい。

 白山では1世紀にわたり、土石流を防ぐ砂防事業が行われ、先駆的な技術が導入されてきた。堤防や護岸整備なども進んだ。それでも治水対策には限界があり、災害発生を前提にした減災の考え方が重要になる。

 現場は昨年10月に小規模な崩落が発生し、春の雪解けで拡大したとみられる。手取川は白山の山頂付近から多くの支流が合流しており、同じような崩落は他でも起きないとは限らない。

 手取川全体の流域管理で、上流の崩落対策をどこまで講じるべきか。技術的な可能性や予算、発生時の被害程度など、さまざまな観点からの検討が求められる。

 有効な対策が困難なら、今回のようなケースでどんな備えが必要なのか。関係する省庁、自治体が認識を共有し、議論を深めるきっかけにしたい。

アジア投資13兆円 量より質で貢献したい

 安倍晋三首相が講演で、公的資金によるアジア向けのインフラ投資を今後5年間で約3割増やすと表明したのは、中国主導で設立準備が進むアジアインフラ投資銀行(AIIB)を意識した対抗策だろう。アジアでは2020年までの10年間で8兆ドル(約968兆円)のインフラ資金が必要とされる。日本とアジア開発銀行(ADB)が応分のリスク負担を引き受けて日本の存在感を高め、アジア諸国との関係を強化していく狙いがある。

 今後5年間で従来より約3割増の総額約1100億ドル(約13兆3千億円)を投じるとなれば、AIIBの資本金を上回る可能性もある。日本は融資の審査体制や組織運営の不透明さなどを理由にAIIBへの参加を見送っており、中国側は今のところ日本の要請に応じるつもりはないようだ。現状のままなら、日本は公正で厳格なルールの下、独自性が発揮できる方法でアジアの発展に貢献していく方が良いのではないか。

 安倍首相は、東南アジア諸国の閣僚らを招いた会合で、「『安物買いの銭失い』。この言葉は日本で受け継がれてきた」と切り出し、値段は多少高くても品質の良い日本製を選べば結局、得をすると呼び掛けた。インフラ整備でも日本に求められるのは「量」より「質」である。高い技術と安全性が重視される分野で存在感を発揮していきたい。

 中国はアジア・アフリカ地区で低コストを武器に、さまざまな建設事業を請け負っている。中国から資材と作業員を送り込み、道路や橋の建設に従事させる手法である。AIIBの発足により、中国は融資とセットで新たな受注を目指すだろう。中国は減速する自国経済の過剰生産力をアジアのインフラ整備に振り向け、成長を維持する狙いといわれる。

 日本は中国に対抗する必要はない。一口にインフラ整備といっても、高速鉄道や発電所、上下水道の整備、公害防止システムなど日本が得意とし、高い技術と長年培われたノウハウが必要な分野がある。同じ土俵で戦うのではなく、質の高さで貢献していきたい。