きょうの社説 2014年12月20日

◎企業の税負担軽減 本社の地方移転に手厚く
 東京など大都市の企業が本社機能を地方に移す場合、法人税が軽減される見通しになった。政府、与党が法人税改革や地方創生の戦略策定に合わせて検討している。企業を誘致した自治体が固定資産税や不動産取得税などの地方税を減免する際には、国が減収分の一部を穴埋めする方向になっている。

 地方の若者が仕事を求めて東京に出ていく傾向を止めることは人口減少の抑制につながる。しかし、実現は容易でない。決め手がなかなか見つからない中で、大都市の企業の本社を一部でも地方に移すことは有力な対策になり得る。

 その裏付けは身近なところにある。コマツとYKKグループが東京から本社機能の一部を北陸に移したことによって、企業内だけではなく地域にも活力をもたらしていることだ。大都市の企業に地方移転を促す際に税負担の軽減は呼び水になるだろう。政府と与党は2015年度税制改正で企業の地方移転に対する優遇をより手厚くしてもらいたい。

 地方移転に対する優遇措置では、本社機能の全部か一部の移転に伴う投資額の一定割合を法人税額から差し引くか、前倒し償却を導入することが検討されている。企業が移転先で雇用を増やすと、その人数に応じて税額を差し引く措置も設けられるという。

 こうした優遇措置は効果を期待できるものの、短期間にとどまれば、移転を促す効果も大きくならない可能性がある。企業が本社機能の一部であっても地方への移転を決断するのは簡単なことではない。東京より地方の方が暮らしやすいとはいえ、抵抗を感じる従業員もいるだろう。

 全国知事会で地方税財政常任委員長を務める石井驤齦x山県知事は移転企業の法人税優遇と地方税の免除を10年間続けることを提案した。企業が数々のハードルを乗り越えるためには、メリットが長く続いた方がいい。

 福井県の西川一誠知事は東京の企業より、東京以外の企業の法人税を軽くすることで人と企業の地方移転を促す案を出した。地方と東京の対立を招く必要はないが、東京一極集中の強力な流れを変えるには思い切った施策がいる。

◎STAP打ち切り 全容解明と再発防止策を
 理化学研究所が来年3月を期限としていた検証実験を打ち切ったのは、STAP細胞の存在を示すわずかな可能性もないと判断したからだろう。研究員の小保方晴子氏が参加した実験でもSTAP細胞は作製できなかったのだから、打ち切りはやむを得ない。今年4月の会見で「STAP細胞はあります。200回以上作製に成功した」と述べた小保方氏の自信は何だったのか。

 理研はSTAP細胞の存在を確認するため、同時並行で二つの検証実験を進めてきた。一つは、小保方研究員が実施する11月末期限のものと、論文の共著者・丹羽仁史チームリーダーらによる来年3月末期限の実験である。

 検証実験に不正論文疑惑の渦中の人物が加わったのは、小保方氏が「コツがある」「私自身のレシピは存在する」などとSTAP細胞に関する独自技術を強調していたからだ。人類の未来に多大な福音をもたらすであろうSTAP細胞が本当に存在していたらと願う国民の期待が、異例の検証実験を後押しした。

 それにしても、本人が再現できない「発見」が、なぜ事実と認定され、国内最高レベルの研究所から公表されてしまったのか。理研の言うように、小保方氏が「科学者として未熟だった」だけでは済まない。理研のチェック機能が正常に働かなかった理由を含め、不正の全容解明と再発防止策をあらためて示す必要がある。

 検証実験で小保方氏は、計48回にわたりSTAP細胞の作製を試みたが、全て失敗した。マウスのリンパ球を弱酸性液に浸すと、万能性遺伝子の働きを示す緑色に光るとされており、検証実験では実際に緑色に光るケースも見られたという。

 細胞は死ぬときに自然発光する場合があるからだが、理研の検証チームは8月の中間報告で、小保方氏がこの発光現象を、万能性遺伝子の光だと誤認した可能性を指摘していた。小保方氏が事実を捏造(ねつぞう)したのではないとすれば、ある程度、納得できる説明のように思える。理研の調査委員会は、国民の疑問に真摯(しんし)にこたえてほしい。