きょうの社説 2014年9月19日

◎金沢いじめ訴訟 子どものSOSは届いたか
 金沢市内の中学1年の男子生徒が、いじめを受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD )を発症したとして、金沢市と同級生3人の保護者に損害賠償を求める訴えを起こした。原告の主張通りなら、一昨年、大津市の中学2年男子生徒がいじめを苦に自殺した事件を受け、県を挙げていじめの早期発見・防止に取り組んできた矢先のことだけに残念というほかない。

 子どもが発していたSOSがどこまで届いていたのか、いじめを止められなかったのは なぜか。金沢市教委は裁判を理由にコメントを差し控えるとしており、事実関係は法廷で争われることになるが、裁判とは別に、市教委や学校は事実を真摯(しんし)に探求し、調査内容を明らかにしたうえで、得られた改善点や教訓を市や県のいじめ対策に反映させるよう求めたい。

 県は今年5月、いじめの早期発見、指導に役立てる目的で初の事例集を作成し、県内の 学校、市町教委に配布している。いずれも「現金を持ってこいと脅され、家族の金を持ち出した」といった典型的なケースから、「暴行を受けた場面をスマホで撮影され、ネットで拡散された」という新しいタイプまで、県内で実際に起きたいじめの具体例ばかりである。学校現場のいじめ対策の「参考書」になると期待されていたが、この冊子は学校現場できちんと活用されているのだろうか。

 学校では今なお、いじめに対し「見て見ぬふり」をする風潮があるといわれる。そうな ると、大津の事件のように、学校や教員が問題を自分たちだけで抱え込み、有効な手を打たずに事態を悪化させてしまいがちだ。今回のケースでは、男子生徒は担任の教諭にいじめを受けていると何度も申し出たにもかかわらず、教諭から生徒に非があるかのような対応を取られ、いじめの助長につながったと主張している。

 県内では2012年度で1412件のいじめが報告されている。この瞬間、どの学校で いじめが起きても不思議はなく、まずは担任の教諭から学校長を経て教育委員会へ報告が上がることが重要である。教育現場で「いじめ隠し」のようなことがあってはならない。

◎国機関の地方移転 腹を据えて取り組みたい
 石破茂地方創生担当相が金沢市内での講演で、東京に集中する国機関の地方移転を進め る考えを示した。国機関の東京一極集中を是正することは長年の課題であり、石川、福井県を含む「自立と分散で日本を変える知事ネットワーク」は先ごろ、地方創生に関する緊急アピールの中で、国の試験・研究機関などの地方分散を訴えたところである。政府は地方創生策の柱の一つとして、国機関の地方移転に腹を据えて取り組んでほしい。

 東京一極集中の是正は、過去数次にわたる全国総合開発計画の主題であり、1988年 には多極分散型国土形成促進法が制定されている。東京都区部に行政、経済、文化機能が過度に集中する状況を改める狙いであるが、同法に基づく国の行政機関の移転は、主に関東財務局、農政局といった支分局や研究機関を「さいたま新都心地区」などに移すもので、東京一極集中の是正とは言い難い。

 さらに、1992年には「国会等の移転に関する法律」が施行され、首都機能移転の検 討が政府に義務付けられたものの、議論は尻すぼみで、東京一極集中の是正につながる国機能の思い切った分散は実行されずにきた。

 一方、地方分権改革の一環である国の出先機関改革も足踏み状態である。民主党政権の 時に、国出先機関を原則として廃止し、権限をブロック単位で地方に移譲する方向となった。しかし、その法的裏づけとなる法律案の国会上程は見送られたままである。

 人口減少問題や地方活性化策の司令塔である政府の創生本部は先の初会合で、東京一極 集中を是正し、地方で安心して子育てができる環境を実現するとの基本方針を決めた。これに基づき、当面の施策を盛り込んだ「総合戦略」と将来展望を示す「長期ビジョン」を年末に決定する予定であるが、この中で国機能の地方移転を明確に位置づけてもらいたい。

 国機関の移転、統廃合は前進と停滞の繰り返しであり、実情は分かりにくい。これまで の政府の取り組みの結果をまとめ、国民に説明する必要もあろう。