今日の社説

2016/08/24 01:07

キリコ祭りの夏 「遺産」継承の輪広げたい

 今夏も能登各地でキリコ祭りが繰り広げられている。文化庁の日本遺産に認定され、能登の伝統文化を伝えるとともに、観光誘客など地域活性化の大事な資源にもなっている。

 高齢化や過疎化で祭りの担い手確保が大きな課題だが、地元の若者や県内外の学生らが積極的に参加するなど、祭りを盛り上げ、地域振興につなげる新たな取り組みが見られる。北陸新幹線開業や日本遺産認定の追い風を生かして、多彩な能登の祭り文化を継承する輪を広げたい。

 祭りは地域づくりの原動力となり、受け継いでいこうという地元の若者たちの姿は頼もしい。先日行われた能登町宮犬のキリコ祭りでは、約200年続く大松明(たいまつ)がよみがえった。昨年は高齢化や人手不足のため取りやめになったが、復活を望む若者らが松明を製作して、祭りが活気づいた。

 今月27日の能登町鵜川のにわか祭では、29年ぶりに中学生絵師がデビューする。これまで公民館の武者絵教室に通い、先輩絵師の指導を受けながら努力を重ね、今年は祭りの呼び物である袖ギリコ「にわか」に武者絵を描く絵師の一人として腕を振るう。

 祭りが盛んな土地柄でも、伝統行事や技術がいったん途切れると復活させるのは難しい。各地で祭りを継承する取り組みに力を入れ、次代に伝える機運を高めてもらいたい。

 キリコの担ぎ手確保や誘客を図る「祭り体験」の中で、客人に料理を振る舞う「よばれ」が注目を集めている。珠洲市では燈籠山(とろやま)祭りで祭礼とよばれ体験ツアーが実施され、9月にも企画されている。祭りと食文化にふれて、強く印象に残るだろう。能登ならではの祭りの風習を地域振興に生かす可能性を探ってほしい。

 穴水町の沖波大漁祭りには、祭りの長期インターンシップ事業に参加した県内の大学生らが担ぎ手に加わった。能登キャンパス構想推進協議会が今年初めて実施したもので、約1カ月前から祭りに携わった学生らは、地域になじめたと感じる一方、祭りを続ける大変さも理解できたという。祭りを継承する力を地域が抱える課題の解決につなげてもらいたい。

米韓合同演習 THAAD配備を着実に

 米韓両国軍が朝鮮半島有事を想定した定例の合同指揮所演習を開始した。北朝鮮は5回目の核実験を脅し文句に演習中止を要求しており、朝鮮半島の緊張が一段と高まることになろう。

 北朝鮮では駐英公使が韓国に亡命するなど、体制内部の動揺が続いている。北朝鮮が引き締めを図るため、サイバーテロなどの挑発行為を行う可能性があり、日本でも十分な警戒が必要だ。

 北朝鮮は今月に入り、使用済み核燃料の再処理開始を初めて公式に認めた。かつて6カ国協議によって、無能力化したはずの寧辺の核施設が原状を回復したことを物語る。北朝鮮の核・ミサイル開発は、日本にとっても重大な脅威であり、米韓の同盟強化は極東の平和を維持していくために極めて重要である。

 米韓の緊密な連携は、中国へのけん制にもなる。米中は今、南シナ海問題や最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備決定を巡り、対立を深めている。中国はTHAADの高性能レーダーが自国の監視強化につながり、安全保障が脅かされていると猛反発し、ロシアもこれに同調している。

 対北朝鮮対策で協力を得ようと中国に接近していた韓国の朴槿恵政権は思惑が外れ、軸足を再び日米側に戻した格好である。中国が北朝鮮の核開発に影響力を行使しないことにしびれを切らし、米国が提案していたTHAADの配備を認めたのだろう。

 米韓両国軍による演習はコンピューターによるシミュレーションを駆使し、戦時の動員態勢を確認する狙いで行う。昨年と同規模の米軍約3万人、韓国軍約5万人が参加するとみられ、市民参加の防空訓練も行われる。演習を米韓の絆を深める機会とし、THAADの配備を着実に進めてほしい。

 朴大統領はソウルでの演説で、最近の北朝鮮からの対話提案に反応を示さず、圧力を続けると強調した。南北間の交流を絶ち、圧力の手段として、国際的な孤立に追い込むことを目指している。日米韓が目指す方向性は同じであり、中国に対する警戒も強めたい。