今日の社説

2016/05/01 01:21

建物の耐震化 補助制度周知し改修促進を

 熊本県内で倒壊の恐れがある「危険」と判定された建物が1万棟を超えた熊本地震では、津波の破壊力を見せつけた東日本大震災と異なり、大型の直下型地震に見舞われた古い建物のもろさを印象付けた。幾筋も活断層が確認されている北陸でも震度6強の揺れに見舞われ、甚大な被害をもたらす可能性を指摘する声もある。熊本地震の衝撃がさめぬうちに、各自治体は耐震診断や改修の補助制度を周知し、積極的に耐震化を進めるよう促したい。

 国土交通省によると2013年時点で国内の住宅全体の耐震化率は約82%と推計され、国では20年に95%にする目標を立てているが、改修などが滞り強度不足で倒壊の恐れがある家屋は全国で約900万戸あるという。北陸では、住宅耐震化率が13年度時点で石川76%、富山72%と推計され、全国レベルより低い数字だ。

 日本海側は、太平洋側に比べて大きな地震が少ない印象を持つ人が多いとも言われる。が、両県一帯に走る活断層がひとたび動けば、古い家屋が数多い北陸だけに広域に甚大な被害も想定される。

 石川県内では、津幡町から金沢市街地を通って白山市に分布する森本・富樫断層帯について、政府の地震調査委員会が3年前、30年以内にM7・2程度の地震が2~8%の確率で起きるとの見積もりを公表した。同断層帯が国内の主な活断層の中でも、地震の発生確率が高いグループに入っていることをしっかり認識したい。

 地震から身を守る上で最も効果的な対策の一つが自宅の耐震補強であろう。1981年以前の古い耐震基準で建てられた住宅に関しては、国や自治体が耐震改修などの費用の一部を補助する制度を設けているが、東日本大震災の発生以降、石川、富山とも、いったん伸びた補助の利用実績が、近年は低迷しているという。

 熊本地震で亡くなった人の多くは古い住宅で窒息死や圧死したものと見られる。県や自治体では、とりわけ高齢で古い家屋に居住する人に個別に改修の必要性について丁寧に説明し、できる部分から順次補強を勧めるくらいの取り組みも必要ではないか。

首相の欧州歴訪 G7の結束を固めたい

 安倍晋三首相は、5月下旬の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)を前に欧州を歴訪する。米加首脳に続き、欧州の先進7カ国(G7)メンバー国の4首脳と会談し、伊勢志摩サミットの議長として、自ら首脳会議の地ならしをする。

 今サミットでは、減速する世界経済とテロ対策が最大のテーマに掲げられているが、日本にとって海洋安全保障も最重要テーマである。中国による南シナ海の軍事拠点化に日米両国は強い危機感を持っており、広島市で開催されたG7外相会合では、名指しを避けながらも、南シナ海で人工島を造成し、軍事利用可能な滑走路などを建設する中国の一方的行動に強く反対する声明を発表した。

 しかし、南・東シナ海から遠く離れ、当事者意識が薄い欧州各国は中国との経済関係を最重視しており、南シナ海問題に深く関与して中国の機嫌を損ねたくないのが本音とみられる。G7外相会合の声明に強く反発する中国は、南シナ海問題がサミットの中心議題とならないよう欧州各国に圧力をかけることは必至であり、外相会合の声明内容がそのままG7首脳の総意として表明されると安易に構えていてはなるまい。

 G7首脳が南シナ海問題で結束を乱さず、国際法に基づく問題の解決と秩序維持を中国に迫ることができるかどうかは、議長役の安倍首相の指導力にかかっているともいえ、欧州歴訪でしっかり根回しをする必要がある。

 安倍首相は、ウクライナ問題で主要国首脳会議(G8)メンバーから外されたロシアも訪問する。ウクライナ問題で欧米と歩調を合わせながらも、北方領土問題の解決をめざして独自の対ロ外交を続けることは決して矛盾しない。その理解を欧州各国から取り付けて

おくことも重要であろう。

 安倍首相は、第1次政権が短命に終わったため、翌年の洞爺湖サミット(2008年)で議長を務める機会を失ってしまった。それだけになお、伊勢志摩サミットにかける思いは強いはずである。サミット成功の道筋を自分の足で踏み固めてもらいたい。