きょうの社説 2014年10月1日

◎御嶽山の噴火 白山でも警戒レベル運用を
 大惨事をもたらした御嶽山の噴火は、活火山の白山や立山を抱える北陸の自治体関係者 にも衝撃を与えた。火山活動を専門とする平松良浩教授(地震学)は本紙の取材に対し、「御嶽山と同じような噴火が、白山で不意打ちに起きる可能性がある」と指摘している。

 万一に備え、最優先したいのは、白山で警報・予報と連動した「噴火警戒レベル」の運 用を急ぐことである。噴火警戒レベルは、火山活動の状況に応じて警戒が必要な範囲と防災機関や住民らが取るべき防災対応をレベル1から5まで、5段階に区分して発表する指標であり、御嶽山や富士山など全国30の火山で運用されている。

 白山は1659年に最後の噴火の記録が残っており、気象庁は24時間の観測・監視が 必要な全国47の活火山の一つに指定している。白峰に気象庁の火山カメラが設置され、インターネット上で画像を見ることも可能だが、噴火警戒レベルの運用には至っていない。石川県と岐阜県は昨年、金沢地方気象台や地元自治体などと連携した白山火山防災協議会を設立し、昨年秋にマグマや火砕流が及ぶ範囲を示した「噴火シナリオ案」をまとめるなど、レベル化に向けた準備作業の過程にある。

 白山火山防災協議会は、白山の噴火時には山頂から半径約5キロ以内の範囲に岩石が飛 散し、約7キロ以内の地域に火砕流や溶岩流が流れ込むと想定しており、御嶽山の大惨事が白山でも起こりうる可能性を示している。

 今回、御嶽山の噴火では噴火警戒レベルは1(平常)で、入山規制などはされていなか った。レベルの引き上げが後手に回り、結果的に大惨事を招いた原因とも指摘され、早期警戒に限界があることも示された。それでも火山災害対策の根幹は噴火警報・予報の精度を上げ、登山者や近隣住民により早く、より確実に情報を伝達し、被害を最小限に防ぐ仕組みを地道に整えていくしかない。

 噴火警戒レベルの導入と、その適切な運用は火山災害対策に不可欠であり、県や金沢地 方気象台などの関係機関は、環境整備や意見調整を急ぎ、できるだけ早く運用を始めてほしい。

◎裁判員合憲判断 負担軽減の課題は残る
 裁判員経験者が裁判員制度の是非を問うた訴訟で、福島地裁は制度を合憲と判断した。 裁判員制度は憲法に反するとの訴えに対して、最高裁は2011年に合憲判断を示している。福島地裁判決はこれに沿ったものであるが、裁判員の精神的な負担をいかに軽減するかという課題はなお残されている。

 強盗殺人事件の裁判員を務めた原告女性は、裁判員法で裁判員になることを強いられ、 殺人現場の証拠写真などで急性ストレス障害になったとして、国に200万円の損害賠償を求めていた。裁判員選任手続きで正当な理由がなく呼び出しに応じない場合、過料を科すと定めているのは、「意に反する苦役」を禁じた憲法第18条に反すると原告側は訴えた。

 これに対して福島地裁は、裁判員を辞退することは認められており、日当支給などの負 担軽減策が取られているとして、原告の訴えを退けた。その一方、裁判で遺体写真を見たり、助けを求める被害者の通報録音を聞いたりしたこととストレス障害の発症に「相当の因果関係がある」と認めた。

 この訴訟を受けて、裁判員の心理的負担を軽減するため、証拠調べで凄惨(せいさん) な事件現場のカラー写真の代わりにモノクロ写真やイラストなどを使う例が全国で見られるようになった。熊本地裁は昨年、争点や証拠を決める公判前整理手続きの段階で、熊本地検が証拠採用を求めた殺人事件の遺体写真を「必要がない」として却下した。東京地裁は遺体の写真などを裁判で示す場合、裁判員選任手続きで候補者に予告する方針を決め、心的障害の恐れがある場合は、辞退できるように配慮している。

 ただ、証拠はそのまま見せるのが原則であり、写真を白黒などに加工することで犯行の 残虐性などが伝わらない恐れがあるとの指摘もなされている。

 法制審議会は先に、審理が長期にわたる事件は裁判員裁判の対象外にできることを柱に した裁判員法見直しの答申をまとめたが、適正な刑事裁判の実現と裁判員の負担軽減の在り方についてなお検討を続ける必要がある。