今日の社説

2015/04/02 01:04

北陸の短観は改善 新幹線開業あったればこそ

 日銀金沢支店が発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)では、北陸の企業の景況感が改善に向かっていた。全国では慎重姿勢を崩さない企業も多いが、北陸では現状も、先行きも景況がいいと判断する企業が増えている。その背景には北陸新幹線の開業効果があるだろう。

 北陸の短観を業種別にみると、新幹線開業で客が増えた宿泊・飲食サービスの好調ぶりが際立ち、3カ月先までの見通しも極めて良好である。レンタカー業を含む物品賃貸や不動産も業況がいい。現状では開業効果が幅広い業種に広がっているほどではないものの、他の地域より明るい材料に恵まれた北陸は優位な立場にある。

 仮に新幹線がまだ開業していなければ、北陸でも企業の景況感が改善せず、地域経済に活力が出ないままであったかもしれない。全国の中でも活気があり、先行きに明るい見通しが出ているのは、北陸新幹線の開業があればこそ、と認識しておく必要がある。

 日銀が発表した3月の短観では全国で企業の景況感改善が足踏みし、先行きは悪化する傾向が出た。個人消費の回復が遅れており、中小企業だけではなく、円安や原油安の恩恵を受ける大企業も強気になりきれない実情がうかがえる。

 総務省の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は2月も前年同月より減っていた。前年割れは昨年4月に消費税率が5%から8%に上がってから11カ月も続いている。

 菅義偉官房長官は記者会見で、消費税率の引き上げから1年が過ぎたことについて、日本経済の再生は順調に進んでいると前置きした上で、増税の影響が「極めて大きかった」との認識を示した。消費の不調をはじめとする影響の長期化は、これまでの施策では需要不足を補う効果が十分でないことを物語っているのではないか。

 新幹線開業で沸く北陸も増税の影響から立ち直ったわけではない。個人消費の回復が進み、企業の設備投資や賃上げに波及していかなければ、せっかくの新幹線効果も拡大しにくい。新幹線が北陸にもたらす活況を持続させ、成長に結び付けるためにも、経済の好循環を本格化させる必要がある。

民法改正案 より賢い消費者の契機に

 政府が民法改正案を閣議決定した。企業や消費者の契約ルールなどを定めた債権関係の規定を、1896年の法制定以来、約120年ぶりに抜本的に見直すものである。インターネット通販の普及など経済社会の変化に対応し、消費者保護に軸足を置いた改正案といえる。

 約200項目に及ぶ大改正であり、政府は今国会で成立させ、企業、消費者への周知徹底を図った上、2018年中の施行を予定している。これを契機に消費者教育も強化し、より賢い消費者、より健全な消費社会を目指したい。

 民法の「現代化」といわれる今回の改正でまず注目されるのは、「約款」の規定を新設することである。約款について、不特定多数の人を対象に画一的に行う取引の内容を示した文書と定義し、あらかじめ約款に基づく契約と示していれば、消費者が内容を理解していなくても有効とみなす一方、消費者保護の観点から、約款の内容が「消費者の利益を一方的に害する」場合は無効とした。

 消費者との契約を効率的に処理するため、企業側が前もって契約条件などを示す約款は、鉄道やバスなどの運送約款、各種の保険約款、銀行取引の約款など広く普及しており、それぞれ個別の法律に規定が設けられている。

 このため、一般法の民法にあらためて約款規定を設けることには経済界に慎重論もあったが、パソコン操作で取引を行うネット業界などからは、約款をめぐるトラブルを回避し、消費者に安心感を与えるため民法の新規定を支持する声が強く出されていた。

 高齢化に対応する消費者保護策として、重度の認知症患者ら判断能力のない人が結んだ契約は無効とする規定も設けられた。

 法改正を機に認識を新たにしたいのは、「契約自由の原則」が民法の基本であることだ。約款に関する規定の新設は、消費者の利益保護のためであると同時に、消費者の自己責任を明確にするものでもある。契約を結ぶ際は、まず約款の内容をしっかり確認するという当事者として当然のことを徹底しなければならない。