今日の社説

2016/07/23 02:01

トランプ氏演説 「米国第一主義」に募る不安

 米共和党の大統領候補に指名されたドナルド・トランプ氏の受諾演説は、「米国第一主義」を色濃くにじませる内容だった。環太平洋連携協定(TPP)についてもあらためて「署名しない」と強調した。

 共和党の新たな政策綱領はトランプ氏の意向を反映し、「米国第一主義が必要で、利益にならない貿易協定は拒絶すべきだ」と明記された。共和党の伝統的な自由貿易主義とは相いれぬ保護主義の台頭を予感させる。

 1929年、ウォール街での株暴落を契機に、米国などの主要国は貿易を制限する保護主義的な政策に傾倒した。この結果、世界は不況の波に沈み、ナチスや日本の軍部の台頭を招く要因となった歴史を思い出す。

 11月投票の米大統領選は、トランプ氏と民主党のヒラリー・クリントン氏との間で争われる構図であり、最新の世論調査の数字はほぼ互角である。トランプ氏がこの戦いを制し、大統領に就任したら、米国の通商政策は自由貿易主義から大きく転換する可能性がある。米国が海外からの輸入や投資を制限し、自国優先の保護主義的な政策を進めれば、日本は苦しい立場に追い込まれる。

 産業革命以降、保護主義で繁栄した国は一つもないといわれる。市場が狭まり、経済成長が止まるからである。「米国第一主義」が行き過ぎて、保護貿易が世界的な規模で復活しないことを願いたい。

 トランプ氏は受託演説で、「いかなる貿易協定にも署名しない」、「米国が防衛する国々、同盟国に相応の負担を払うよう求める」などと述べた。

 ただ、大統領候補者が選挙中の発言を、大統領就任後に撤回する例は多く、トランプ氏もその点を、割り引いて考える必要がある。日本政府内では過度な心配は無用との声がある一方、TPPに関しては、批准は難しいという見方が強く、オバマ政権以上に対日圧力が増すのは避けられそうもない。

 TPPについてはクリントン氏も反対を表明しているが、大統領就任後は、オバマ政権を引き継ぎ、賛成に転じる可能性が高いと見る向きもある。

「まち博」開幕 足元の「宝」大事にしたい

 金沢市中心部を博覧会場に見立てて行う「かなざわ・まち博」の夏本祭が23日に開幕する。ことし17回目となる「まち博」は市民らがまちに出て、金沢の魅力を再発見する取り組みを重ねてきた。

 北陸新幹線開業で金沢への関心がさらに高まり、伝統や文化が暮らしに根付いている魅力が国内外の多くの人を引きつけている。観光客が急増してにぎわいが生まれる一方で、まちの風情がなくなってきたとの指摘があり、あらためて文化都市・金沢を守ろうという機運も高まっている。

 「まち博」が実践してきたように、まず自分の住むまちを知ることが地域への愛着を深め、金沢の伝統や文化を守る原動力になる。足元の「宝」を大事にすることで、訪れる人もそのまちに魅力を感じることができるだろう。新幹線時代を迎えて、「まち博」が果たす役割は大きいといえる。この夏はまちに出て、知らなかった金沢のよさを見つけたい。

 2000年から始まった「まち博」の歩みとともに、金沢は国史跡指定や「歴史都市」認定、重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)の選定などが相次ぎ、都市の風格を高めてきた。金沢城公園では新幹線開業に合わせて、玉泉院丸庭園と橋爪門の復元整備が完了するなど、城下町の見どころは増えており、懸念される観光の負の側面を克服する上でも、ふるさとに理解を深めることは重要である。現地を見て、さまざまな体験をすることは、まちづくりを考えるきっかけにもなる。

 「まち博」は、卓越した技や豊富な知識を持つ人々が講師を務め、歴史や伝統工芸、食など金沢の魅力を分かりやすく伝えてきた。「まち博」限定の催しをはじめ、「企業市民」の理念のもとに協賛企業を見学するなど、参加者も受け入れ側も幅広い。

 昨年の夏のまち博は106講座が開かれ、約3千人が参加した。今夏も約1カ月にわたり、人気の「こどもまち博」や「金沢散歩学」「美の巨匠」など多彩な講座が繰り広げられる。大人から子どもまで新たな発見を楽しみたい。