今日の社説

2015/08/01 01:56

知事会の地方創生 決意を具体化する契機に

 今年の全国知事会議は地方創生を主な議題として開かれ、魅力ある地方をつくることによって日本の創成につなげると宣言した。地方創生宣言にのっとって地方が取り組むべきとした行動のリストには石川県や富山県の施策も例示されている。

 人口減少の克服に向けた施策は待ったなしの課題である。両県は知事会議の議論を契機にして施策の実効性を高め、地方創生に取り組む決意の具体化に向けた一歩を力強く踏み出してもらいたい。

 全国知事会が地方創生の施策として示した行動リストには、石川県の施策として、企業の本社機能移転が盛り込まれた。国は本社機能を地方に移した企業の法人税を軽減する改正地域再生法を8月にも施行する。全国知事会議で谷本正憲知事の要請を受けた石破茂地方創生担当相が法施行前に着手された移転も対象に含める方向で検討する姿勢を示したのは心強い。

 このほか石川県の施策としては新幹線開業効果の最大化、3歳未満児を自宅で育てる家庭の支援拡充などがリストに例示された。富山県の施策では、空き家を活用した定住や半定住の促進、30歳前後の県出身者のUターン促進、事業所内保育施設の設置や運営に対する助成などが紹介されている。

 他の県も移住や地域産業の活性化、少子化対策などでさまざまな取り組みに動いている。石川県は遅れを取らないように施策の具体化を急いでもらいたい。成果を挙げた他県の事例を参考にするとともに、地域の事情や強みを考慮した独自の施策に磨きをかける必要がある。

 全国知事会は文化とスポーツの振興も地方創生の課題に掲げた。東京五輪・パラリンピックで展開される文化プログラムに地方が主体的に取り組めるように枠組みを早期に策定するよう国に求めている。石川の文化には厚みがある。五輪に向けて文化を生かす方策も積極的に探っていきたい。

 地方創生で成果を出すためには国も地方の危機感を共有する必要がある。地方創生に関連する新型交付金の概算要求額は知事会の要望を下回る見通しになっているが、国は地方の意欲をそがないような対応をしてもらいたい。

原発事故強制起訴 「想定外」では済まされぬ

 東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷容疑で告発され、不起訴となった勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人が強制起訴されることが決まった。背景には未曾有(みぞう)の大事故の責任を誰も取らないのは、国民感情として許し難いという思いがある。企業トップの「予見可能性」を立証するのは困難を伴うだろうが、裁判を通じて、国民の胸中にある「原発事故は回避できたのではないか」という疑念を、できる限り晴らしてほしい。

 2002年、政府の地震調査研究推進本部は、福島第1原発の沖合を含む日本海溝沿いで、「マグニチュード8クラスの津波地震が30年以内に20%の確率で発生する」との予測を出した。この予測を元に東電は津波の規模を試算し、「福島第1原発に最大15・7メートルの津波が来る」「4号機の原子炉周辺は2・6メートル浸水する」などと推計した。

 実際に押し寄せた津波は11・5~15メートルで、1号機から4号機までの原子炉建屋は高さ4~5メートルまで浸水した。大津波をほぼ正確に予見していながら、なぜ対策を怠ったのか。せめて電源喪失などの事態に備えていたら、事故を防ぐことができたのではないか。

 福島第1原発は、土木学会の津波の評価指針を元に、高さ5・7メートルの津波を想定して設計された。政府の地震調査研究推進本部が出した不都合な数値は、見て見ぬ振りをされたに等しい。事故の深刻さを考えれば、「想定外」では済まされぬ重大な判断ミスといわざるを得ない。

 東電の勝俣元会長らは、告訴・告発されたものの、東京地検は「大津波は予測できず、事故は回避できなかった」などとして2度不起訴処分にした。「事故は防げた」として刑事責任を問うのは難しいと考えたからだろう。

 それでも検察審査会が2度にわたって「起訴すべき」と議決した意味は重い。不起訴を不服として、検審に審査を申し立てた福島県の被災者ら約5700人の怒りが伝わってくる。それは事故責任を曖昧にすべきではないという国民共通の思いでもあろう。