今日の社説

2017/01/20 01:12

金沢港の整備計画 貨物の機能強化も念入りに

 石川県は新年度から金沢港の機能強化に取り組む。クルーズ船の発着拠点にふさわしい港となるように整備計画の策定に着手する。現状の金沢港には、急増するクルーズ船を受け入れるのに十分な設備が整っていない。景観も良好とは言えず、機能強化は喫緊の課題である。

 再整備に取りかかる際に留意してほしいのは、貨物港としての役割である。県内では金沢港があることによって企業の立地と流出防止につながる効果が出ている。近くの港から輸出入できる利点を大きく生かせるように、整備計画の策定では貨物港としての機能強化も念入りに検討してもらいたい。

 金沢港では今月、バスがオーストラリアに向けて輸出された。製造元のジェイ・バスは今年度に4台の輸出を予定している。今後も海外での受注を増やして金沢港からの輸出拡大を目指すという。日本海側から完成車が輸出されるのは珍しく、金沢港の将来性を象徴する事例として受け止めたい。

 これまで金沢港を積極的に活用してきたのはコマツである。粟津工場で生産した建設機械の輸出で金沢港を使う比率は、昨年度の45%から今年度は55%に上がる見通しになった。能登ではベアリング製造のNTNが協力企業とともに生産拠点を拡充しており、金沢港の利用拡大を期待できる。

 金沢港は1963年の三八豪雪で陸路が途絶えたことを教訓にして、砂丘地を掘り込んで造られた。当初は必要性を疑問視する空気もあったが、今では貨物、旅客の両面で予想を超える成果を挙げている。国土交通省からも港の整備が経済投資を呼び込む好循環に入ったとの見方が出ており、再整備を積極的に支援する姿勢を県に示したのは心強い。

 課題は土砂の堆積である。大野地区では大型船が利用できるように水深を掘り下げる工事が2006年度に始まったが、冬季風浪の影響で想定以上の砂が港内に入ったため、掘り下げ工事の終了時期は17年度から4年先送りされた。

 その後も浚渫(しゅんせつ)を続ける必要はあるが、費用に見合う効果はあるはずだ。太平洋側の大災害時は金沢港が代替機能を担うことになり、国費を投入する意義はある。

文科省「天下り」 行政の信頼が損なわれる

 文部科学省の天下りあっせん問題で、事務方トップの前川喜平事務次官が引責辞任の意向を固め、関与した幹部の懲戒処分が不可避となった。文部科学行政に対する国民の信頼を損ねる由々しい事態である。

 元高等教育局長が早稲田大に再就職した際、文科省人事課の職員が大学に元局長の職務経歴に関する書類を送っていたとされる。前川事務次官が辞任やむなしの判断に至ったのは、国家公務員法で禁止されている職員・元職員の再就職あっせんに、省として組織的に関与していたからとみられる。あっせんの事実関係や元局長の再就職の経緯を国民に明らかにする必要がある。

 国家公務員が民間企業などに再就職すること自体は決して否定されるものではないが、官民が癒着して公正であるべき行政がゆがめられ、国民の不信を招く恐れがあるため、2007年に国家公務員法が改正され、天下りに関する規制が拡大、強化された。

 現役の職員は、他の職員やOBの再就職をあっせんすることはむろん、利害関係のある企業に自ら求職活動を行ってはならない。民間企業に再就職した元職員は退職後2年間、契約や処分に関して便宜を図るよう元の省庁に働き掛けてはならない、というのが主な禁止事項である。

 改正前の国家公務員法では、退職後2年間は在職中に利害関係のあった営利企業への天下りは原則として禁止された。が、改正後は再就職者に届け出義務を課し、公表する制度に変更された。国家公務員の能力を民間で生かすため、再就職の垣根はむしろ低くする一方、行政の公正性に疑念を持たれないようルールを厳格にし、外部の監視体制も強化するのが法改正の趣旨であった。

 しかし、法改正後も監視委員会から規定違反と指摘される事例が相次いでいる。文科省は規定順守の意識が希薄だったように思われる。不明朗な天下りをなくすためのルールが形骸化し、違反が絶えないようでは、天下り自体の禁止規定を再び強化することも検討しなければならなくなろう。